見どころ
経済や金融業界のリアルな姿を垣間見たいのなら、映画がおすすめ! 特に本を読むのが苦手な人や異業種で働く人には、映像で見るのは分かりやすく、2時間程度なので手っ取り早い。
実話をベースにした作品もあるので、世の中の経済事件を理解するのにも一役買ってくれる。多少専門用語も出てくるものもあるが、映画をきっかけに勉強してみるのもおすすめだ。エンターテインメントとしても楽しめる、おすすめの1本を紹介する。
高杉良による同名小説を映画化した社会派ドラマ。中小企業の権益を守るため、国を相手に闘った一人の税理士・飯塚毅氏の半生を描く。当時、この出来事は「飯塚事件」として知られ、国会でも取り上げられるほど注目を集めた。その闘いは7年もの間に及ぶ。なお、飯塚氏は「TKC(栃木県計算センター)」の創設者でもある。
あらすじ・解説
税理士の飯塚毅(滝田栄)は、中小企業の経営と従業員への利益還元をのため、取引先に別段賞与制度を推奨していたが、国税局は節税手段としての同制度を認めようとしなかった。
昭和37年、飯塚は国税局を相手取り、訴訟を起こすが、敗訴による権威の失墜を恐れた当局は、飯塚が関与する企業に落ち度がないか捜査を開始する。
解説: 中小企業の権益を守るため、国税局へ闘いを挑んだ実在の税理士を主人公に、高杉良の同名原作を映画化した人間群像ドラマ。
『わが青春のとき』の森川時久監督がメガホンを取り、戦後日本経済史上、まれに見る経済事件“飯塚事件”を通して、迷走する現代の日本経済界へ経済モラルのあり方を問う。
自身の税理士倫理に基づき、文字通り“不撓不屈”の精神で国家権力と闘い抜く主人公にふんした、名優・滝田栄の力強い演技に胸打たれる。
「別段賞与」と「旅費日当」による節税指導
別段賞与とは、今でいう決算賞与のこと。大企業と比較して経営基盤が脆弱な中小企業を支援するために飯塚氏が考案した。企業が大きな利益を出した際に従業員に対して特別賞与を支給する。だが、すぐには支払わず、未払金として損金に計上。未払い金は従業員に利息を支払いながら事業の運転資金にできるというものだ。賞与の支給は資金事情が好転した時でよく、当時の税法上では問題ないものだった。
また、旅費規程を定めると旅費日当は経費として算入でき、非課税所得となることから、飯塚氏は節税のために1日あたり2000円というように日当を高めに設定することを勧めた。映画内でも語られるように、当時の総理大臣の日当が700円だったというから、その金額は破格であったことがよくわかる。
“不撓不屈”の姿勢を支えた家族との絆
上記の節税対策を国税庁は節税ではなく脱税指導だとして、飯塚氏を徹底追及。嫌がらせのように弾圧的な税務調査を繰り返したが、違法なことは何もしていないとして飯塚氏はひるむことなく真っ向からに国税庁に立ち向かう。
一介の税理士が、国税庁という大きな権力機関を相手に闘うことは生半可なことではない。事実、闘いの中で顧客や従業員たちの大半を失っていってしまう。それでも飯塚氏が権力に屈することなく、闘っていけたのは家族との絆があったからだということが伝わってくる。
息子から手紙をもらうシーンや、妻・るな子(松坂慶子)が事件の渦中にあっても大らかにふるまう姿、そして夫を守るためには時には単身で大胆な行動に出る頼もしい姿に胸が熱くなるはずだ。
文:M&A Online編集部
貴乃花が大関推挙伝達式において「不撓不屈の精神で」という口上によってニュースになったが、この「不撓不屈」という言葉は流行語大賞には選ばれなかった。しかし、皮肉なもので2年後には宮沢りえの「すったもんだがありました」が見事流行語大賞に選ばれた。
そんなこんなでこの映画は1人の税理士が国家権力である国税局と対決する実話に基づいた物語。国税局といえば『マルサの女』を思い出しますが、この「マルサ」という言葉は1987年に流行語大賞に選ばれています。
『マルサの女』を観て国税局のかっこよさに憧れた人も多いでしょうけど、この『不撓不屈』を観ると考えがガラリと変わるはずです。大企業を優遇した税制、中小企業イジメ。時代は高度経済成長期であるため、弱い者から税金をふんだくろうったって、全体の税収からみれば微々たるものなんです。脱税はさすがに許されないことですが、合法的な節税であれば問題ない。それを国税局は税理士法改正のために反抗する者を脱税者として排除しようとする。その横暴なやり方に反旗を翻した男、飯塚毅が目をつけられることになった・・・
全体的に飽きさせることのない展開で、迫力ある映像もないしアクションだってもちろんない。弱者のために正しいことをやっているんだという主人公の信念に心を揺すぶられて、不当な捜査に怒り震えるといった心的迫力が全てなのです。
国税の嫌がらせのため離れていく顧客や不当逮捕のためやむなく退職する従業員にも心を痛め、相手を貶めることを潔しとしない飯塚に惚れ惚れしてしまったくらい。う~ん、よかった。大企業に勤める人以外は必見かも。
「不撓不屈」は「ふとうふくつ」と読み、強い意志を持ちいかなる困難や失敗にもくじけないことを指した言葉です。
「撓」という文字には「曲がる」「くじく」という意味があり、読み下しである「くじけずくっせず」がそのまま「不撓不屈」の意味合いを表しています。
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