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フランソワーズ サガン (著), Francoise Sagan (原名), 河野 万里子 (翻訳)
ものうさと甘さが胸から離れないこの見知らぬ感情に、
悲しみという重々しくも美しい名前をつけるのを、わたしはためらう――。
海外名作新訳コレクション。解説・小池真理子。南仏の陽光に導かれ、セシルは悲劇への扉を開く。
セシルはもうすぐ18歳。プレイボーイ肌の父レイモン、その恋人エルザと、南仏の海辺の別荘でヴァカンスを過ごすことになる。そこで大学生のシリルとの恋も芽生えるが、父のもうひとりのガールフレンドであるアンヌが合流。父が彼女との再婚に走りはじめたことを察知したセシルは、葛藤の末にある計画を思い立つ……。
20世紀仏文学界が生んだ少女小説の聖典、半世紀を経て新訳成る。
本文より
〈罪は、現代社会に残った唯一の鮮明な色彩である〉
わたしはこのことばを、実行に移すよりもはるかにしっかりと、揺るぎない確信をもって、自分のものにした。
わたしの人生は、このことばをなぞり、このことばにインスピレーションを受け、このことばからわきあがっていくのだろうと考えた。
教訓に満ちたエピナル版画の、背徳の絵のように。無為の時間や、物事はとぎれとぎれにしか起きないことや、日々の善良な感情などは、忘れていた。観念の世界で、わたしは、恥知らずの低劣な人生を考えていた。(「第二章」)
フランソワーズ・サガン Sagan,Francoise(1935-2004)
カジャルク生れ。19歳の夏に、処女小説『悲しみよ こんにちは』が批評家賞を受け、一躍フランス文壇の寵児になる。その感性をモーリヤックは「魅力的な小悪魔」と絶賛。1957年自動車事故で九死に一生をえる。1978年に来日。小説、戯曲と著書多数。
河野万里子
1959年生れ。上智大学外国語学部フランス語学科卒業。主な訳書にウィリアムズ『自閉症だったわたしへ』、サン=テグジュペリ『星の王子さま』、サガン『悲しみよこんにちは』、レヴィ『あたしのママ』など。