雰囲気満点、演出落第点。って感じですかねえ。
シュワちゃんが荒廃した街を車で走る描写や、畑を焼き払う場面、またはマギーが仲間たちと花火ではしゃぐ場面なんかは、画的に凄く良い雰囲気だと思うんですね。ただし、それが映画的な面白さに最終的につながっていくかというと……そうはならなかった、と感じました。
特に、奥さんの描写が面白くなくって。簡単に言うと、悪役とまでは言わなくても、悪く描きすぎ、なんですよねえ。マギーはシュワちゃんの連れ子だから冷たい(冷静な)態度でジャッジを下せるって事なんでしょうけれども。けれども。それじゃドラマ的に面白く感じないわけで。
奥さんもマギーを心の底から愛している。愛しているけれども、感染が怖い。自分の血を分けた子たちに感染してしまったら……自分に感染したら、という恐怖を愛情と交えて描いた方がぐっと映画に深みが出たと思います。
逆に、義理の弟との屋根の場面は素晴らしかった。簡単なやりとりでお互いの愛情深さが見てとれたし、最後の屋根から飛び降り自殺する場面とも有機的につながっているしね。
ただし、最後にマギーが回想するのが自身の母親の事だけなんですよね。あの頃が一番幸せだった的な場面になっていて、「ええ~」と白けてしまいました。ここら辺も、ウェイドの現在の奥さんとマギーの関係性を単調にしか描けていなかった弊害が出ています。
マギーがやたらめったら「ママ」を求めていた、という落着になってしまっているのですが……ウィルスに感染したのはその幸せいっぱい夢いっぱいの子供時代より大分後の話なわけで、マギーが求めていた家族は、今、彼女の目の前にあったじゃないですか。義理の母、義理の弟、義理の妹、パパ。それらはなんだったの?的に感じてしまって、ちっとも感動につながらないんです。
もうひとつこんな場面があります。ボロトラックを修理するウェイドとマギーが、妻、ママ、の話をしあう。「俺はこのおんぼろを信じている」という台詞もありますし、マギーも「ママがパパを愛したのはそのトラックのおかげね」と言う。昔は良かった――言い換えると、前の家族の方が幸せだった、という非常に冷たい場面に感じてしまうんですね。とどめにマギーが読んでいる本の題名が「過去の僥倖」みたいな感じでして……お前ら今の家族はどーでもいいんかい!と言いたくなります。
マギーが義理の母親と上手く行っていないことを表すための場面かもしれませんが、いくらなんでもやり過ぎで。ここら辺は本当に演出もっと考えてほしかったなあ、というのが正直なところです。マギーに対するウェイドの反応が「そうじゃないだろ~」的な感じなんですよ。監督の狙いとしては、血のつながったパパと娘の秘密のやりとり、という事なのでしょうが……それならそれで、そんな二人のやりとりを聞いてしまって複雑な気持ちになっちゃう今の奥さん、とかどうとでもやりようはあったように感じます。
ラストは家の屋根からのマギーの飛び降り自殺ですが、飛び降りていく際中に、ゾンビ目になっていたのが人間の目に戻ります。つまりは、自身を取り戻したという描写ですよね。十字架が映されたりして、信仰心のある一家、というのが伝わってくるので、自殺は罪です。父親に娘殺しという罪を背負わせない為、自ら罪を背負って死んでいくマギー。感動ですよね、どう考えても感動でしょ? でも、前述の理由から、しらっとしちゃう場面に堕してしまっています。う~ん、別の監督に撮って欲しかった!!!!!
さて、シュワちゃんの演技に関してですが。
シリアス演技、という事でつねに眉間にしわ寄せて頑張っております。頑張っておりますが、演技的見せ場がねえ! どういうこったい! シュワちゃんのカットに関しては何だか短いし(台詞無しだと長め)。監督がシュワルツェネッガーを信用していない、という感じがな~んとなく感じられてしまって哀しいかな。
〈Blue-rayの感想〉
なんと! シュワちゃんが好きになった俳優第一号! とかなんとかあちこちでシュワちゃんファンを名乗ってきた僕ですが……劇場で見逃してしまったああ!!
というわけでブルーレイ買ってシコシコ鑑賞いたしましたよ。とほほ。
特典としては、まずメイキング。これは本編映像がやたら差し挟まれるマイナス点がありますが、まあ普通の出来。「アクションスターのシュワちゃんがシリアス演技なんてできんのかよって思う人もいるだろうが……」という正直にもほどがあるご意見が面白かったかな。
あと、監督が「人間性を描いたゾンビ映画はかつてなかった」とかほざいているのを聞いて、「馬鹿かこいつ!? 『デモンズ‘95』とか『ゾンゲリア』とか観てねえの?」って感じで憤慨。僕が本編から感じ取った「この監督信用できん」というのは正しかった!
削除シーンは本編でも十分嫌な女に描出された奥さんが、さらに嫌な女として描かれている場面です。
ほんと、この映画の関係者は義理の母親というものに対して偏見でも抱いているのかねえ?
日本版と北米版の予告編が入っているのは◎。
従来から日本版予告編はネタバレの問題があるにせよ、できはピカイチと思っている僕には珍しく、北米版の方が良い予告編だと思いました。
あと、監督とシュワちゃんへのインタビューですが、これはメイキングに一部流用されちゃってるのが大きなマイナス点ですね。
<label class="toc-title" for="toc-checkbox-1">目次</label>
- 映画『マギー』 作品情報
- 映画『マギー』 評価
- 映画『マギー』 あらすじネタバレ(ストーリー解説)
- 映画『マギー』 あらすじ【起・承】
- 映画『マギー』 結末・ラスト(ネタバレ)
- 映画『マギー』 感想・評価・レビュー(ネタバレ)
- アクションを封印したシュワちゃんのゾンビ映画
- 重く悲しいストーリー
- 映画『マギー』 まとめ
突如発生した壊死性のウイルスにより、世界は崩壊の危機にあった。
ウイルスに感染した者はゾンビとなり人を襲うので、基本的に隔離病棟に収容される。しかし隔離病棟はひどい扱いを受けると噂されており、感染した家族を自宅に連れて帰る者もいた。
ウイルスが感染するのは感染者に噛まれた時だけなので、ゾンビ化していない内は普通に過ごすことができるのだ。
アメリカの片田舎に住む16歳の少女・マギーは外出先で感染者に噛まれて感染してしまう。
病院から連絡を受けた父親のウェイドはマギーを迎えに行き、自宅へ連れ帰ることに。
後妻のキャロラインはウェイドとの間にもうけた幼い子供2人をおばの家へ預け、マギーの身の回りの世話をする。
いつゾンビ化するか分からない不安に押しつぶされそうなマギー。そしてウェイドもまた苦しんでいた。
マギーがゾンビ化した時に自分は一体どうしたら良いのか…。自らの手でひと思いに殺すのか。隔離病棟に入れて薬で苦しい最期を迎えさせるのか。
そうしている間にもマギーのゾンビ化は進行していき、決断の時は迫るー。
[st-kaiwa2]
徐々にゾンビ化していくマギーの様子が怖いし悲しい。
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