地域包括ケアシステム

2024年11月23日 08時26分12秒 | 社会・文化・政治・経済

わかりやすく解説【事例つき】


▶監修・解説:北川哲也氏

補助金や許認可の手続きを専門とする行政書士事務所Link-Up代表 北川哲也氏。
2011年に29歳で開業し7年間個人事務所として中小企業向け行政書士サービスを展開。
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地域包括ケアシステムとは

地域包括ケアシステムとは、高齢者が要介護状態になっても住み慣れた場所で自分らしい暮らしを最後までおくれるように、地域が一体となり支援体制を構築する仕組みです。

地域包括ケアシステムにおける地域の範囲は、「おおむね30分以内にサービスが提供できる日常生活圏」とされています。中学校の校区区域と同等の範囲といえばイメージしやすいでしょう。こうした地域の包括支援センターやケアマネージャーが中心的な担い手となります。

地域包括ケアシステムの目的

地域包括ケアシステムの目的は、高齢者介護の主体を国から自治体に移行していくことです。少子高齢化が加速し、高齢者や要介護認定者は増える一方ですが、介護の担い手となる人材の育成や、施設の拡充は追いついていかないのが現状です。

こうした状況では、従来の国主体の施策だけでは不十分であるため、地域の力を存分に活かす必要が生じてきます。介護施設の不足も今後深刻化するでしょう。介護・ケアの場を従来の施設ではなく自宅にシフトしていくなど、医療・介護サービスの枠組みを再構築する必要が迫られているのです。

地域包括ケアシステムが構築された背景

地域包括ケアシステムが考案された背景には、急速に進む少子高齢化があります。なかでも「2025年問題」は象徴的です。2025年は、団塊の世代が75歳を迎え後期高齢者となり、本格的な超高齢化社会を迎えるタイミングです。

日本の総人口は減少するなか、後期高齢者の割合が増加していくため、今後も医療や介護の需要は増え続けるでしょう。リソースは逼迫し、十分なサービスが提供できなくなる恐れがあります。そこで目を向けられたのが、地域の力を活用した医療・介護サービスの拡充を目指す地域包括ケアシステムなのです。
 

地域包括ケアシステムは1980年代から取り組まれている

地域包括ケアシステムの概念は、1980年代に現在の広島県尾道市(当時は御調町)の取り組みが起源とされています。同市の公立病院が「寝たきりゼロ」を目標に掲げ、医療・行政が連携した実践的な施策を推進します。その取り組みを「地域包括ケアシステム」と呼んだのがはじまりです。

2000年には「介護保険制度」が開始され、高齢者支援は医療・介護・福祉に加え、生活支援サービスの連携も必要であるという気運が高まります。2014年には、地域包括ケアシステムの考え方が具体化された政策として、「医療介護総合確保推進法」が施行されました。
 

地域包括ケアシステムを構築する4つのメリット

地域包括ケアシステムを構築することにより、要介護となった高齢者が尊厳を保ち、自立して暮らせるようになります。施設や病院ではなく、住み慣れた自宅で過ごしたいと考える高齢者は多く、その意思を尊重できることが、大きなメリットといえるでしょう。

医療ケアが必要な高齢者が自宅で過ごせる

地域包括ケアシステムが機能することで、在宅医療を提供する医療機関と介護サービス事業者の連携が深まります。そうすることで、要介護者は自宅にいながら、一貫した質の高い医療と介護の提供を受けられます。

従来は医療ケアが必要な高齢者は入院の必要があり、在宅での介護はかなりハードルが高いものでした。地域包括ケアシステムにより、医療と介護の連携が深まることで、在宅医療の基盤も整備されていくことになります。

高齢者の社会参加が促進される

地域包括ケアシステムでは、高齢者を2つの側面で捉えています。支援を受ける側の高齢者と支援を提供する側の高齢者です。比較的元気で体も動く支援をする側の高齢者には、老人クラブやボランティアなど、積極的に社会参加をしてもらいます。

そうした活動を通じて社会とのつながりを深め、「生きがい」「生活のハリ」を感じてもらうことは当人の介護予防にも役立ちます。地域包括ケアシステムは、高齢者が地域のなかで役割を持ち、自分らしく生きるための一助となるでしょう。

地域独自の課題に対応するサービスが生まれる

地域包括ケアシステムが機能し始めると、地域特有のニーズに対応する細やかなケアができるようになります。例えば「買い物」や「見守り」などの生活支援も、農村部と都市部では形態が違ってくるでしょう。

要介護者の状態によっても、必要とされるケアは違ってきます。地域単位で細かく対応していくことで、こうしたニーズに細やかに対応でき、介護が必要な高齢者の生活の質が向上していくのです。

家族の負担を軽減しつつ認知症の高齢者が自宅で過ごせる

地域包括ケアシステムとともに、認知症患者を地域でケアしていく取り組みも活発化しています。こうした動きは、「認知症サポーター」や「認知症カフェ」などが増えていることからもみてとれます。

認知症サポーターとは豊富な知識を有し、地域において認知症患者や家族をサポートする役割を担う人です。認知症カフェはこうしたサポーターや患者・家族が集い、情報や悩みを共有する場です。こうした取り組みが活性化することで、認知症患者と支える家族が孤立せず、自宅で穏やかに過ごせるようになるでしょう。
 
地域包括ケアシステムの基本的な考え方

地域包括ケアシステムの基本的な考え方は、「5つの構成要素」から成り立ちます。この5つの構成要素を地域の特性とニーズに合致した形で作り上げていくことが、効果的な地域包括ケアシステムの構築には欠かせません。

そして、その根底にある理念が「4つの助」であるといえます。

地域包括ケアシステム5つの構成要素

地域包括ケアシステムの5つの構成要素は、「住まい」「生活支援」といった基本的な「生活」に関わる要素と、「医療」「介護」「予防」といった専門的な要素から成り立ちます。これらが密接に関わりあうことで有機的なつながりが構築され、上手く機能していくのです

医療

地域包括ケアシステムにおける医療は、日常と緊急時の2つの側面から考えなくてはなりません。日常的な医療は、「かかりつけ医」や地域の「連携病院」が担います。大きなけがや入院が必要な病気など緊急時の医療は、「急性期病院」が担うことになります。

両者の連携をスムーズにするには、地域における医療機関どうしで、情報共有を密に行うことが必要です。両者が垣根のない連携を深めることで、在宅から入院・入院から在宅へという切り替えが上手くいくようになります。

住まい

地域包括ケアシステムにおける「住まい」とは、自宅だけでなく介護施設等も含まれます。つまり、要介護となった高齢者が、最期を迎えるまで過ごす場所のことです。住まいは生活の基盤であり、地域包括ケアシステムの根幹をなすものともいえます。

単に住む場所を提供するだけでなく、賃貸契約時の「保証人」を手配するといったことまでが含まれます。住む場所に困った高齢者には、高齢者住宅の拡充や、空き家の有効利用などにより、住まいを提供していくことが有効な策となるでしょう。

介護

「介護」は、在宅系介護サービスと施設・居住系介護サービスの2つに分類されます。在宅系介護サービスとは、訪問介護や訪問看護など、必要に応じて在宅生活を支援するためのサービスです。

これに対し、施設・居住系介護サービスは、特別養護老人ホームや介護療養型医療施設に加え、より地域に密着した小規模多機能型居宅介護といったものがあります。これらのサービスは途中で切り替えることも可能です。在宅介護では対応しきれなくなり、施設への入居に変更するといったことは、想定される流れといえるでしょう。

 

□生活支援

要介護となった高齢者が自宅で過ごすには、適切な生活支援は欠かせません。買い物支援や見守り、配食や安否確認といったものが挙げられます。高齢者が安全かつ快適に生活するためには、こうした日常的な支援が必要です。

 

生活支援は医療や介護と違い、専門知識は必要ありません。自治体や老人会、ボランティアやNPO法人が支援に着手しやすい分野といえます。地域住民にも積極的に参加を呼びかけ、参加を促していくことが必要です。

 

□予防

「予防」は地域包括ケアシステムの本質となる部分です。要介護状態を未然に防ぎ、健康な状態を維持することが、在宅生活をより長く続けるために、もっとも必要なことであるといえます。社会参加の一環として、高齢者に要介護者の生活支援に携わってもらうことも、十分な介護予防になっています。

 

介護予防サービスが充実すれば、要支援1・要支援2といった軽度の要介護状態であれば、快適な在宅生活をおくることは十分に可能となるでしょう。

 


地域包括ケアシステム4つの助

地域包括ケアシステムを構築する基本的な考え方「4つの助」を解説します。

この「4つの助」は、国により制度として定められた支援と、自身や周囲の人々の自発的な支援により成り立っています。

 

 


自助
自発的に介護予防に取り組み、自身で生活課題を解決する力


公助
制度化された生活困難者への支援(税によって成り立つ)


互助
家族や知人、ボランティアなど、周囲の人々の自発的な支えあい


共助
制度化された社会保障制度(医療・年金・介護保険など)



国の制度としての、「公助」「共助」は、今後さらに加速する高齢化社会においては、十分な拡充は難しいと考えられています。そこで必要になってくるのが、自身と周囲の人々による支えあいです。実効性のある地域包括ケアシステムの構築には、「自助」と「互助」へのアプローチが重要であるといえます。
 


 

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