『雨音が時を刻みて夜も半ば』
『春嵐音の嬉しき暗き窓』
『小窓打つ風を数えて長き夜』
『雨流るほこりの筋を数えたり』
身体は正直、考えが甘かった。自己欺瞞で形成した希望的観測は「春の嵐」とともに流れさってしまった。
仰臥すれば圧力がかかる患部だから、肋骨骨折にしては呼吸は楽だったが臥位に差し障りが出るとは思いもよらなかった。
引き金は本当に微妙で、体位の数センチの違いで「こむらがえり」に似た激痛がくる。トリガーポイントはもちろん骨折部位に相違ないが、痛みは前胸部に発生して、このごろは軽い筋肉痛にも似た影響がそこに出ている。痙攣している感覚を生じてしまうのだから当たり前か。
座位のまま、前へ後へと半身を預けての一夜となったが、春の嵐は退屈しのぎにはなったようだ。天空の風の唸りは自身のうめきを一時とは言え消してくれたのだから。