タナゴ類の繁殖で産卵母貝の確保と飼育が難しいというのは識者一致した意見だろう。小生は全くの初心者の末席に位置する立場であるけれど飼育してみて実感している。同じ池の中でマシジミは毎年繁殖し既に四世代を繋いでいるけれどドブ貝やマツカサ貝などの稚貝は見る事が出来ていない。最長飼育期間も4年に過ぎず、昨年ようやくタナゴの稚魚を得られたばかりなのである。
たまたま80歳を超えている越後の次兄にぼやいたことがきっかけで対策としてスケッチが郵送で届き、ほどなく実物が送られてきた。タナゴは母貝の種類を選ぶと言うし、産卵前に貝の吐水口付近で匂いを確かめるような行動をする、と飼育先輩の四兄が話していたことが記憶にあって朝のまどろみの中で仕掛けが浮かんできたのだった。それはドブ貝やカラス貝の大きめの貝殻を利用し、まだ母貝として使えないサイズから誘引物質を頂いて騙す、というシステムだ。これで稼働するなら母貝不足は解消できる。
次兄のダミー母貝はハマグリで、このためにハマグリを購入し賞味しなければならなかったとか。小生、ハマグリなど何十年も食してはいなかった。せいぜい「即席ハマグリのお吸い物」程度か・・・。
朧でも全体像が浮かべば、後は部材の調達と加工方法でプロトタイプを作ってみるしかない。貝殻はあるしエアーレーション用のダクトも余りがある。貝と生体を入れる個室は何が適当かと思案していたら洗面所の綿棒容器が目に留まった。これなら透明で貝の出し入れも楽だが蓋の固定にねじ止めが要る。似たような容器として思い至ったのはキムチの空き容器だった。これはしっかりとして透けているし水流を起こすパイプを固定しても大丈夫だ。更に視点を広げれば安いプラの密閉容器が数百円でサイズ様々で売っている。とりあえずは試作品なのでキムチの空き容器で良いかとクリア容器と比較してみた。
クリア容器は高さがあり中に砂を入れても余裕がある。一方、キムチの容器は蓋は丈夫なのだが高さが低い。思案していた時、偶然にも蓋の交換が可能と判明し、深いクリア容器に丈夫なキムチ容器の蓋を組み合わせることにした。この容器に生体を入れ匂い物質を吐水に含ませる。エアーリフトで上昇した水は上部の漏斗容器内に溜まりオーバーフローからシリコンチューブを下って偽装母貝の吐水口から排出されるシステムである。これはもう「オレオレ詐欺」に近い。
卵は集卵室兼孵化室に留まるとの思惑で、孵化後は上昇流に乗り稚魚溜まりで回収できるだろうと考えた。これが無いと再び親魚の水域に流れ落ちてしまい捕食される危険が増してしまう。以下に今回試作した主要部を簡単に説明する。
偽装母貝の吸水管と吐水管 シリコンチューブを並べシリコン樹脂で固めてある。生体の吸水と吐水の位置は決まっているのは知っていても左右どちらかまでは知っていないから接続は適当になった。試用する際は殻の半分は砂に埋める。
生体容器兼集卵室 クリア容器とキムチの蓋を組み合わせ、ダクトを立てた。通す穴の径を適切にすれば瞬間接着剤で実用可能だろう。容器内には底砂と産卵魚種の好む二枚貝を入れる。入れる貝は母貝サイズでなくとも大丈夫だろうと推測した。一番のメリットは受け入れる卵の数を制限しなくてもよい事だ。思う存分、産卵してもらって構わないのである。
吸水管内に放出された卵は水流に乗って容器内に入る。ここで水流が緩やかになり着床してくれるのではないかと期待しており、透明容器なので卵や胚の成長ぶりも観察可能なはずである。
稚魚溜まりを持つ吐水管用水溜め 水面上にあるから数センチの落差で吐水口から排水されるだろうと読んでいるが実際の試運転はまだなのだ。漏斗容器は漏斗を転用した。水が溢れない高さにオーバーフロー部の水の出口がある。この排水は偽装母貝に流下する。
この次兄の着想を改良し自分なりのシステムを製作し始めた時に、小生すぐ上の四兄から電話があって同様の趣旨で実績がネットに載っているというのだ。検索してみたところ「人口産卵床」という括りでいくつもヒットしたものの写真はおろかスケッチすらも無い記事だった。
今時の資料や発表に図も写真も無いようでは見識が問われる。穿った意地悪な見方をすれば「出せない」理由があるとしか思えないのだ。「我々は画期的な方法に成功した!」というような手柄話なんて誰も求めてはいない。広く周知し寄与させる事が血税や助成金で業務を行なっている立場の義務・責任だろうと思ってしまうのは小生独りだけなのだろうか。「成功体験、公開してあるよ」と教えられた某水族館のページには写真があると話に出たものの小生には閲覧できなかったから詳細は不明である。小生的には成功したシステムと比較してみたかった。
今回これは「画期的システム」と思い、次兄からは「吉報を期待する」というスケッチ文面の結びだったものの、まあ、世の中、発想は似たり寄ったりなのだろうと実感した。次兄が発案し小生が改良したシステムは実証しないまま公開するのだが、このような産卵床方式で母貝不足を補い貴重種を含め繁殖が容易になればこの上ない喜びでもあるけれど、本来は母貝が生育繁殖できる環境こそが求められているに違いない。
この試作品は素人の小生製作のシステムだけにどこかで複数の飼育者が実証してくれることを期待もする。すでに実証している公の報告があるだけにグラフや数値表などより、そのシステムのイラストや写真の添付公開を求めたい。
百文は一見に如かず偽母の路
※この稿を投稿した後に「相模川ふれあい科学館」のHPを再度閲覧し、もしやとスクロールしてスクロールしてようやく閲覧できた。全体像は不明なもののタンクの着想は似たような感じだ。小生の産卵装置でも朗報がもたらされる予感がする。画像を見て小生の装置の省略が出来る事が判った。ダミー母貝は必要なかったのだ。
縁掛け式フイルター容器に貝を入れて飼育水槽底部の集卵器で吸排水すれば良い。小生の試作器は池の中に設置の予定で作ったのだが再試作思案は水槽での装置になる。
たまたま80歳を超えている越後の次兄にぼやいたことがきっかけで対策としてスケッチが郵送で届き、ほどなく実物が送られてきた。タナゴは母貝の種類を選ぶと言うし、産卵前に貝の吐水口付近で匂いを確かめるような行動をする、と飼育先輩の四兄が話していたことが記憶にあって朝のまどろみの中で仕掛けが浮かんできたのだった。それはドブ貝やカラス貝の大きめの貝殻を利用し、まだ母貝として使えないサイズから誘引物質を頂いて騙す、というシステムだ。これで稼働するなら母貝不足は解消できる。
次兄のダミー母貝はハマグリで、このためにハマグリを購入し賞味しなければならなかったとか。小生、ハマグリなど何十年も食してはいなかった。せいぜい「即席ハマグリのお吸い物」程度か・・・。
朧でも全体像が浮かべば、後は部材の調達と加工方法でプロトタイプを作ってみるしかない。貝殻はあるしエアーレーション用のダクトも余りがある。貝と生体を入れる個室は何が適当かと思案していたら洗面所の綿棒容器が目に留まった。これなら透明で貝の出し入れも楽だが蓋の固定にねじ止めが要る。似たような容器として思い至ったのはキムチの空き容器だった。これはしっかりとして透けているし水流を起こすパイプを固定しても大丈夫だ。更に視点を広げれば安いプラの密閉容器が数百円でサイズ様々で売っている。とりあえずは試作品なのでキムチの空き容器で良いかとクリア容器と比較してみた。
クリア容器は高さがあり中に砂を入れても余裕がある。一方、キムチの容器は蓋は丈夫なのだが高さが低い。思案していた時、偶然にも蓋の交換が可能と判明し、深いクリア容器に丈夫なキムチ容器の蓋を組み合わせることにした。この容器に生体を入れ匂い物質を吐水に含ませる。エアーリフトで上昇した水は上部の漏斗容器内に溜まりオーバーフローからシリコンチューブを下って偽装母貝の吐水口から排出されるシステムである。これはもう「オレオレ詐欺」に近い。
卵は集卵室兼孵化室に留まるとの思惑で、孵化後は上昇流に乗り稚魚溜まりで回収できるだろうと考えた。これが無いと再び親魚の水域に流れ落ちてしまい捕食される危険が増してしまう。以下に今回試作した主要部を簡単に説明する。
偽装母貝の吸水管と吐水管 シリコンチューブを並べシリコン樹脂で固めてある。生体の吸水と吐水の位置は決まっているのは知っていても左右どちらかまでは知っていないから接続は適当になった。試用する際は殻の半分は砂に埋める。
生体容器兼集卵室 クリア容器とキムチの蓋を組み合わせ、ダクトを立てた。通す穴の径を適切にすれば瞬間接着剤で実用可能だろう。容器内には底砂と産卵魚種の好む二枚貝を入れる。入れる貝は母貝サイズでなくとも大丈夫だろうと推測した。一番のメリットは受け入れる卵の数を制限しなくてもよい事だ。思う存分、産卵してもらって構わないのである。
吸水管内に放出された卵は水流に乗って容器内に入る。ここで水流が緩やかになり着床してくれるのではないかと期待しており、透明容器なので卵や胚の成長ぶりも観察可能なはずである。
稚魚溜まりを持つ吐水管用水溜め 水面上にあるから数センチの落差で吐水口から排水されるだろうと読んでいるが実際の試運転はまだなのだ。漏斗容器は漏斗を転用した。水が溢れない高さにオーバーフロー部の水の出口がある。この排水は偽装母貝に流下する。
この次兄の着想を改良し自分なりのシステムを製作し始めた時に、小生すぐ上の四兄から電話があって同様の趣旨で実績がネットに載っているというのだ。検索してみたところ「人口産卵床」という括りでいくつもヒットしたものの写真はおろかスケッチすらも無い記事だった。
今時の資料や発表に図も写真も無いようでは見識が問われる。穿った意地悪な見方をすれば「出せない」理由があるとしか思えないのだ。「我々は画期的な方法に成功した!」というような手柄話なんて誰も求めてはいない。広く周知し寄与させる事が血税や助成金で業務を行なっている立場の義務・責任だろうと思ってしまうのは小生独りだけなのだろうか。「成功体験、公開してあるよ」と教えられた某水族館のページには写真があると話に出たものの小生には閲覧できなかったから詳細は不明である。小生的には成功したシステムと比較してみたかった。
今回これは「画期的システム」と思い、次兄からは「吉報を期待する」というスケッチ文面の結びだったものの、まあ、世の中、発想は似たり寄ったりなのだろうと実感した。次兄が発案し小生が改良したシステムは実証しないまま公開するのだが、このような産卵床方式で母貝不足を補い貴重種を含め繁殖が容易になればこの上ない喜びでもあるけれど、本来は母貝が生育繁殖できる環境こそが求められているに違いない。
この試作品は素人の小生製作のシステムだけにどこかで複数の飼育者が実証してくれることを期待もする。すでに実証している公の報告があるだけにグラフや数値表などより、そのシステムのイラストや写真の添付公開を求めたい。
百文は一見に如かず偽母の路
※この稿を投稿した後に「相模川ふれあい科学館」のHPを再度閲覧し、もしやとスクロールしてスクロールしてようやく閲覧できた。全体像は不明なもののタンクの着想は似たような感じだ。小生の産卵装置でも朗報がもたらされる予感がする。画像を見て小生の装置の省略が出来る事が判った。ダミー母貝は必要なかったのだ。
縁掛け式フイルター容器に貝を入れて飼育水槽底部の集卵器で吸排水すれば良い。小生の試作器は池の中に設置の予定で作ったのだが再試作思案は水槽での装置になる。