訪問2日目、最後の訪問は石岡区農会です。
農会は農協のような組織です。非政府組織ですが、農会法の適用を受け、台湾行政院農業委員会、全国農会、台中市農会、そして、石岡区農会という上下関係はあるようです。会員数は約3000人、主要生産物はポンカン、高級梨です。対応してくださったのは呉維章理事長=写真中央、張東海総幹事=写真右=のほか、職員の皆さんでした。途中から王偉誠区長も加わりました。
話は冒頭から、厳しいものでした。石岡区農会の主産物である梨の穂木は、鳥取県だけから輸入しているのに、鳥取県の対応はひどく、不信感を持っているというのです。これまで友好的というか、建設的な提案が多かっただけに「じぇじぇじぇ」って感じでした。2時間近く話しをしましたが、石岡区農会の不満は、4点ありました。
1番目の問題は穂木の不足です。1998年から鳥取県から梨の穂木を輸入しているが、希望しただけの穂木が届かない。以前は希望した数量の8割前後は出荷していただいていたが、今では4割前後。これでは農家は生産できない。確かに鳥取県農林水産部の資料でも、穂木の出荷数は、2008年には4394箱(1箱=10キロ)だったものが、2009年には2633箱、2011年には1683箱まで落ち込み、昨年も2213箱に留まっています。他の梨生産地は新潟、秋田など他県の穂木を入れているが、石岡は鳥取だけで、一度も他の産地から買ったことはないと繰り返されました。鳥取産の穂木は農家の人気が高いが、必要数量が確保できないと生産が落ち込み、困っている。しかも、石岡区は后里区、新社区、大湖区と穂木を共同輸入しており、その窓口が石岡区なので、他の地区からも叱られている。中国産は輸入が禁止されていたが、穂木の不足から一昨年から輸入が解禁になった。価格は鳥取産の半分。それでも、石岡区は中国産を使っていない。しかし、農家は毎年、穂木が確保できるかどうか不安を抱えており、何とかして欲しいというのです。
次の問題は、鳥取県は正確な情報を出さないというのです。その年の生育状況のレポートが、送られてきて、そこに穂木の生産量が書いてあり、この数量をベースに農家の希望を聞いているが、届く穂木の量は、毎年、この数字より少ない。不信感に近いものがあるとまで言われました。
3番目の問題は、穂木を輸出できるのは、台湾の植物防疫検査官の検査に合格した果樹園の穂木だけです。これまでは鳥取県の国際交流員が検査現場にずっと居てくれて、通訳してくれて本当に助かったが、今は対応してくれる時間が短い。その結果、コミュニケーション不足になり、検査がうまくいかないのだそうです。以前のように協力してくれないだろうかと希望されました。
最後の問題は、鳥取県の農業試験場が開発した新品種の「新甘泉」「なつひめ」に非常に大きな関心を持っている。その穂木が欲しいが、取り合ってもくれないというのです。
これらの問題について、正確な情報を持っていませんので、帰国後、関係者から事情を聞いてみるとお約束しました。しかし、梨の農家の減少と高齢化が穂木生産を減少していることが、この問題の根底にはあり、簡単に解決できる問題ではないようです。それでも、石岡区農会の皆さんは最後は、「自分たちの思いを丁寧に聞いていただき、本当に良かった」と口々に話されました。ただ、「議員の力は大きい。これで問題の解決に前進した」と言われましたので、「台湾と日本は政治制度が違う。日本では議員は行政府に言ったからと即時に変わるような制度にはなっていない」と誤解だけはされないように説明はしました。しかし、本当に大きな宿題をいただきました。帰国後、農林水産部や関係者と話してみたいと思っています。
梨の果樹園も見せていただきました。
異常気象の影響での開花だそうです。これから穂木を挿し木するそうですが、前年の挿し木がいくつか残っていました。
果樹園の近くに橋がありました。
恋人の橋というのだそうです。
毎年、この橋の上でアベックが氷の上に乗って抱き合って口吻をし、一番長口吻を続けたカップルには、香港への往復エアーチケットが送られるそうです。地域おこしのイベントに知恵を絞るのは万国共通のようです。
橋の近くに、農会経営のカフェがあり、鯉幟が泳いでいました。日本で見て可愛いと思ったので、台湾の河川に多い、豆魚という魚をモチーフに作ったそうです。
この晩は、石岡区役所主催の歓迎会がありました。王区長ら区役所幹部、石岡区農会の皆さんに加え、現住民族である客家の皆さんのお世話をしている台中市政府客家委員会の頼朝暉主任委員、僑光科技大学の王博士、謝前区長、議員だった連氏などたくさんの方も参加され、日本側も日台親善協会の方々も合流し、様々な話と鳥取への期待を聴かせていただきました。王博士は横浜国立大学で博士号を修得されただけあって日本語が堪能。ずっと通訳いただき、本当に助かりました。
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