とやざき農園日誌

浅間山麓(長野県小諸市)で自然農法による農業を行っています
肥料や農薬を施さず自然の養分循環の中で野菜を育てています

窒素循環に見られる土壌細菌の働き

2019年02月13日 | 日記
細菌は、地球上の様々な環境(好気性から嫌気性まで)に適応し、光合成や窒素固定、有機物分解など、生態系の物質循環において重要な位置を占める。形状は桿(かん)型、球型、螺旋型が一般的で、大きさは1~10 μm程度と微小。働き別に見た細菌の例としては、
光合成:シアノバクテリア(藍色細菌)
窒素固定:窒素固定菌
有機物分解:放線菌(放線細菌)、枯草菌(納豆菌など)
などがある。

中でも特徴的なのは、大気中の窒素N2を利用できる唯一の生物である「窒素固定菌」。自然界における植物の成長は、窒素固定菌を起点とした細菌活動が生み出す窒素循環システムに依存するところが大きい。

一般畑作物に見られる窒素利用の基本ライン
(1)土壌内:窒素固定菌が大気中の窒素(N2)からアンモニウムイオン(NH4+)を合成(窒素固定)
(2)土壌内:亜硝酸菌がアンモニウムイオンから亜硝酸イオン(NO2-)を合成(硝化)
(3)土壌内:硝酸菌が亜硝酸イオンから硝酸イオン(NO3-)を合成(硝化)
(4)植物内:根から硝酸イオンを吸収
(5)植物内:硝酸イオンからアンモニウムイオンを合成(還元)
(6)植物内:アンモニウムイオンからアミノ酸を合成(同化)
(7)植物内:アミノ酸からタンパク質を合成し、成長に活用

マメ科植物においては、根に共生する「根粒菌」(窒素固定菌の一種)が、(1)の窒素固定に続き(6)のアミノ酸合成を行うため、宿主である植物はアミノ酸を受け取って直ちに(7)を行うことができる。

植物は、アンモニア態窒素、硝酸態窒素、アミノ態窒素といった複数系統から窒素吸収が可能であるが、どの系統からの吸収が強くなるかは土壌条件に依存する。
(a)アンモニア態窒素:アンモニウムイオンは陽イオンであるため、粘土などのマイナスに帯電した土壌粒子に吸着されやすく、流動性を高めるには土壌水分が多量に必要。ゆえに、乾燥条件の畑土壌では利用しにくく、水田や、比較的土壌水分が多い果樹栽培で利用可能。
(b)硝酸態窒素:硝化菌の生息条件が、中性に近いpHと好気性であるため、土壌を酸性化する果樹や、潅水で嫌気的になる水田では利用しにくい。
(c)アミノ態窒素:土壌中のアミノ酸は、枯草や動物遺骸などの分解による窒素リサイクルで発生する。ゆえに、土壌有機物が豊富に存在すれば利用可能。植物内でのアミノ酸合成にはエネルギーコストがかかるため、日照不足などで植物が光合成を十分に行えない場合、土壌からのアミノ酸吸収が効果的に働く。

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