皆様こんにちは
山三三ツ屋染舗の三ツ屋邦孝です。
いつも当ブログをご覧いただき誠にありがとうございます!!
クリーニング店からパーカー(F.A.T製)にカレーのしみを付けたので
しみ抜きをして欲しいとのご依頼があり自社工場にしみ抜きを依頼した所
自社工場ではしみ抜きが出来ないと断られた為に当店にしみ抜きをして
欲しいとのご依頼です。
パーカー(F.A.T製)
全体的に染ムラがありデニムのストーンウオッシュ加工の様な風合いで、少し違和感が
有ったのでメーカーのHPを調べてみると下記の様に表示していました。
「シンプルながらも細かなステッチワークの胸刺繍が印象的なジップパーカー。
目の詰まったT/C裏毛起毛素材を使用しピグメント加工を施すことで、絶妙なアタリ感・
ムラ感のある普段とは違った表情が魅力。
アメリカンオーセンティックを感じさせる縫製、生地方向やサイドパネルなど細部にまで
こだわったアイテム。ポケットのブランドネームも程よいアクセントに。」となっていました。
ピグメント加工が分からなかったので、検索して調べてみました。
ピグメント加工とは
ピグメントは水に溶けない色素のことで、特殊溶剤と顔料を使って生地を染色させる加工技術を
ピグメント加工(=ピグメントダイ)と言います。普通の洋服は染料を使って染色しますが、
特殊溶剤によって顔料による染色を可能にさせます。
ピグメント加工による顔料は内部に染み込まず、表面にくっついているイメージです。
洗うごとに色が剥がれ落ちるので、絶妙な色落ち感を表現する際に用いられます。
ピグメント加工は他の加工技術と組み合わせて用いることで、より一層おしゃれな
仕上がりになります。特に相性がいいのがヴィンテージ加工です。
ヴィンテージ加工は生地の表面を擦ったり日焼けさせたりして、全体に使い古したような加工を
施す技術です。これに加えて、ダメージ加工とピグメント加工を施すことで、リアリティが増した
味のある製品が出来上がります。
特徴・染色方法について
例えばジーンズの場合に多いのが、使い古したような風合いを出すために軽石(ストーンウォッシュ)
を使って洗うことで、効率よくおしゃれな風合いを表現します。
ただしピグメント加工ならもっと自然にヴィンテージ感のある仕上がりにできるんです。
そんなピグメント加工では、顔料を使用した染色方法であり、染料で染める方法とは異なります。
2つの染色方法は以下のように大きく違う点があります。
染料:繊維に染料を化学的に結合させることで、内部まで染める(分子レベル)
顔料:色のついた粒子状の物体を樹脂で繊維に接着させる(粒子レベル)
染料は繊維の奥まで色が染み込むので、クリーニングに出しても色が落ちないという
メリットがあります一方で顔料は繊維に色が付着している状態に過ぎず、洗濯によって
色が剥がれ落ちる可能性があります。これは接着剤の役割を持つ樹脂によって左右されるんですね。
ただし、ピグメント加工はあえて色落ちをさせる手法なので効果的です。
プリント用のインクを使って綿や麻といった天然素材に染色しましょう。
他の素材にも使えますが、表現できる色の濃度に限界があり、不自然な色合いになるかも
しれませんので、事前にテストをして色の再現度をチェックしておきたいです。
洗濯は色落ち・色移り注意
ピグメント加工は色落ちさせるための加工ですが、何度も着用や洗濯を繰り返すことで、
徐々に顔料が剥落し、下地の繊維部分が露出し始めます(白化)。顔料の付着部分にヒビが
入ることもありますね。ただし実際はジーンズのように、狙って色落ちをさせるように作られた
製品が多く、使い込むごとに味わいが生まれ、唯一無二のフェード感を持ったジーンズが
出来上がります。そうなると特に注意すべきは色移りです。白のTシャツにジーンズの青色が付着した、
なんて経験はありませんでしょうか。このように洗濯や着用によって他の衣類やバッグに色が移って
しまうことは、利用者からのクレームでも多い内容です。
顔料は粒子なので、他の製品と擦れ合った時に、色が付着してしまうんですね。
ただし、付着した顔料はやはり不安定な性質なため、洗濯によって洗い落とすことも可能です。
他の衣類と摩擦を起こして色移りを繰り返すことにだけ注意しましょう。
以上にようになっています。
パーカー(F.A.T製)品質表示
素材 表地綿65%ポリエステル35%リブ部分綿95%ポリウレタン5%です。
洗濯表示 液温は30 ℃を限度とし、洗濯機で非常に弱い処理が出来る、
塩素系及び酸素系漂白剤の使用禁止、タンブル乾燥禁止、底面温度110 ℃を
限度としてスチームなしでアイロン仕上げができる、ドライクリーニング禁止
となっています。
ピグメント加工の事はタグには記載されていません。
パーカー(F.A.T製)食べこぼし(カレーしみ)
ピグメント加工顔料染の場合は顔料を接着力の弱い樹脂で表面に乗っている状態の為に
ドライクリーニング禁止となっているので油性しみ抜きでの顔料剥離の可能性があります。
水処理で弱い中性洗剤でのしみ抜きでも顔料剥離で色抜け(脱色)の可能性があります。
パーカー(F.A.T製)食べこぼし(カレーしみ)油性しみ抜き後
カレーの食べこぼしの為のしみ抜きですが、まずは油性しみ抜きを行いましたが脱色は
有りませんでしたが、カレーのしみも落ちませんでしたので、次は水性のしみ抜き処理です。
パーカー(F.A.T製)水処理しみ抜き後の脱色
水処理を行うとカレーのしみは70%落ちましたが地色も100%位落ちました。
私自身は色掛け(色修正・染色補正・染直し)を行えるので慌てずに残ったカレーしみを
地色が更に抜けても酵素処理を行って蛋白質を除去してしみを落とし切りました。
自分で抜いた地色は自分で色掛け(色修正・染色補正・染直し)を行い補正して行きます。
パーカー(F.A.T製)色掛け(色修正・染色補正・染直し)後
このパーカーの地色はどんな染料から作られているか、長年の経験から二種類の染料と
閃いて、色掛け(色修正・染色補正・染直し)を行って補正して綺麗に直りました。
パーカー(F.A.T製)食べこぼし(油しみ)
反対側のポケットにもしみが付いていました。
パーカー(F.A.T製)しみ抜き後
こちらは油性処理で落ちたので油しみと思います。
綺麗に仕上がりました。
ピグメント加工は比較的新しい加工法なので、クリーニング店も知識とアプローチ方法を
学んでいかないと、クリーニングやしみ抜き等で脱色によるクレーム対応に追われて、
クリーニングを引き受けられない事態に発展しかねない事が想像できます。
着物の場合も黄変しみ抜きや型破れや、糊置き不良から染料が流れ出ている部分を
抜染する事で地色も抜ける為に再度色掛け(色差し・色修正・染色補正・染直し)を
行って補正するので普通の事ですが、色掛け(色修正・染色補正・染直し)を出来ない
業者さんは結果的に言うと油性処理で撤退する事が賢明と言う事を色を剥がしてから
後悔しているる事が現実だと思います。
ピグメント加工を行っている品物のしみ抜きは水処理を行うと脱色しますのでお気を付け
下さい。クレームでお困りのクリーニング業者さんとこのブログ読者様の一助になる事を
心より願っています。
着物と洋服のお手入れは
厚生労働大臣認定一級染色補正技能士のいる
山三 三ツ屋染舗にご用命下さい。
〒062-0902
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