さて、今回は「肉離れを繰り返してしまう理由」についてお話しします。
肉離れを繰り返す理由はいくつか考えられると思いますが、思いつく範囲でさっとあげるならば、
「マルユース(誤用:身体の使われ方のエラー)」
「オーバーユース(使いすぎ)」
「瘢痕組織の残存」
といったあたりとなるでしょう。
そのなかで、今回のお話しのメインテーマとなるのは三つ目の「瘢痕組織の残存」という問題です。
「瘢痕組織」というのは怪我の修復過程で残ってしまった「きずあと」のことです。
コラーゲン繊維がからみあってダマになったような状態で、正常な組織に比べると硬くてのびにくいという特徴を持っています。
こうした「しなやかさ」に欠ける組織は正常な組織との境界で剥離しやすくなります。
「境界がはがれやすい」とする根拠なのですが、それを説明するために知っていただきたいことを書いてゆきますね。
例えば、均質な物質に張力をかけるとその力は構造全体にまんべんなく伝わってゆきます。
ですが、一部により「柔らかな部分」ができた場合は張力がその柔らかな部分に集中します。
特に固さが急に変わる部分に力は集まりやすくなります。
加わった力が「柔らかな部分」の耐久限度を超えれば「柔らかな部分」から千切れてゆくことになります。
この現象をイメージできるようにちょっとした実験をしてみました。
まずティッシュで太いこよりと細いこよりを作ってつなぎます。
太いこよりにはティッシュを一枚使い、細いこよりはティッシュ1/2を使いました。
こよりの両端をもって均等に引っ張ったところ…
こよりは結び目から千切れました。
千切れた断端を見てみると、細いこよりから千切れていました。
これを肉離れによって作られた瘢痕組織と隣接する筋組織に当てはめて考えてみましょう。
運動時、「固い瘢痕」とそれに連なる「柔らかな筋組織」に強い張力がかかったとします。
張力はそれらの境界に集まるでしょう。
力に耐えきれなければ組織は損傷をきたします。
この場合、上記の考察を踏まえると、より柔らかな筋組織が瘢痕組織との境界面から剥がれたということになるでしょう。
もし瘢痕組織と筋繊維とのあいだに生まれた「強度の格差」が「肉離れの再発」の原因になっているのであれば、「強度の格差」を是正することで肉離れの再発を防止することができるはずです。
ではどうやって?
次回は「癖になった肉離れの治療」についてお話しします。