2~3週間前の休日(月曜日・平日)のこと、
何を思ったか、人生初のトレイルランに挑戦してまいりました。
この日は午前中にウエイトリフティングを2H。
調子もそこそこいい感じ。
気分よく練習を終えたその帰り道。
ふと
『温泉に浸かりたい!』
と猛烈な温泉欲にとられまして…
トレーニング場が小田急線沿線でしたので、最初は『箱根に行ってしまおうか?』
なんて考えてたんですが、スマホをいじっているうちに
『どうせなら有酸素運動で汗を絞ってからビール&温泉を楽しみたい!!!』
と欲が出て、悪ノリ半分で高尾山を訪れたのでした。
この高尾山、ご存知の方も多いと思いますが、長短いろんなコースがあるんです。
電車の中では一刻も早くBEERと温泉を楽しみたかったので『一番短いコースを選ぼう』と考えていた私。
でも、高尾山に着いてみると『自然を感じたい…』とまた欲が出てきまして、沢伝いに登る6号路(90分のコース)をチョイス。
コースの入り口までは『ゆっくりと自然を噛みしめながら登ろう』と思っていたのですが、
そこにお仕事のメッセージ(Messengerっていうのを使っています)が届きます。
実は11/12に神奈川県で行われる
第22回神奈川県ノーギアパワーリフティング選手権大会・第21回神奈川県ノーギアベンチプレス選手権大会
で徒手医療協会としてイベントを行う事になっておりまして、
この日はそうした事務連絡をする日でもあったんです。
お仕事の話はスムーズに終わり、休日の解放感からか
「ちょっと山に来てるのよ(´∀`*)ウフフ」
とかなんとか送ったところ
「走れ!40分で登頂せよ!!」
とのメッセージが届きます。
流石は体育会系。
「頑張ります!」
とご返杯。
とはいえこれはお互い軽いジョーク。
まさか走ろうなんてこれっぽっちも…
これっぽっちも!?
いや、どうだろ?
できるかな?
最近だいぶコンスタントにトレーニングしてるしな…
行けるんちゃうか!?
行くか!?
よし!行ってみよう!!!
と魔が差しまして、登山からトレイルランに変更と相成りました。
とはいえ初トレイルランですし、かつ高尾山は登山者も多いので他の人の迷惑にならないよう
「人がいるところでは歩く」をルールにスタートを切りました。
急に思い立ったので、ウエイトの練習道具やびしょびしょの着替えなどでパンパンのリュックを担いだまま。
一瞬『駅のロッカーに荷物を預けようか』とも考えたのですが、また駅まで戻るのもおっくうです。
『これもいいトレーニングになるやもしれん!』
と根拠のない自信を胸に所要時間90分の沢伝いのコースを走ること50分(2/3は歩いてましたが…)。
無事山頂に立つことができました(;´Д`)
途中3~4分の休憩を3つとったので、もう少し頑張れば45分ぐらいまでは縮められそう。
でも、40分はちょっと難しかったかな、といった印象でした。
山頂は多くの人で賑わっています。
茶屋もあって、「生ビール」の文字が目に眩しく映りますが、ここはぐっと我慢の子。
その強力な誘惑を
『もっと美味しいビールを飲んでやるんだ!』
とこれまた強い煩悩で振り払い、
帰りの道も走ることにしたのですが…
これが間違いのもとでした。
登りのタイムに気をよくして
『下りはもっと早く帰れるはず』
と走り出すも残り1/3というところで膝痛出現…
なんと教科書通りの腸脛靭帯炎を背負い込んでしまいました。
『せめてリュックを駅に預けていれば…』と後悔の念が脳裏をかすめます。
早くふもとの温泉でビールを煽りたかったのですが、
はやる気持ちと数百円をケチるケチ根性がアダとなった感じです。
なってしまったものは仕方がない。
腹をくくってその場でできうる対処(治療ですね)をすることに。
傷めているのは上の図の赤い斜線のあたり。
腸脛靭帯(膝の側面)と外側広筋(四頭筋腱部と腸脛靭帯の交差部遠位)です。
腸脛靭帯のテンションを下げるために筋膜張筋のストレッチ(スイッチバックという手法)をし、
外側広筋の緊張(スパズム)をなだめるのにポジショナルリリースを行います。
上の図の赤線のあたり、腸脛靭帯と外側広筋の滑りも悪かったので筋膜リリースも掛けました。
さらに、下肢の屈伸で働く膝周囲の筋肉たちの協調性をただすMWMS※まで行ったところで一先ず治療を終えました。
軽く走って見たところ痛みは1/4ほどといったところ。
※当院に来ていただいている皆さんにはお馴染みのセルフケアとしてお伝えしている「あれ」です。
膝関節のMWMSの動画はコチラ↓
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古い動画ですみません…
しかし、走り出すとじきに痛みもぶり返します。
そりゃそうです。
患部がダメージを負って炎症を起こしている最中ですから、本来的には運動自体を中止したいところです。
でも、ここは山。
自力で降りなきゃどうにもこうにもなりません。
そこで、いままで登山やトレランで膝を傷めて相談にいらした患者さん達から聞きかじった対処法を実践することに。
その対処法は…
斜面の方を向いて後ろ向きに降りる!
すれ違う方に奇異の眼で見られつつも、これなら痛みなく下り降りることができそうです。
斜面に向き合って下ると痛みが感じられなくなったカラクリは股関節と膝関節の角度にあります。
腸脛靭帯炎は腸脛靭帯が大腿骨の突起(外側顆)との摩擦で生じますが、
その摩擦は膝が20~30度の浅い曲げ伸ばしで生じます。
基本的にはこの浅い角度の曲げ伸ばしが繰り返されることで腸脛靭帯炎が生じるのです。
なので、長距離走の選手には起こりやすく、短距離走の選手にはそうそう起こることが無いのです。
上の図から、斜面を背にくだる動きと向きあってくだる動きの
膝の角度を比較すればお判りいただけると思いますが、
膝の角度は右の「斜面に向き合う方」がふかく維持できているでしょう!?
さらに股関節の角度のふかさも斜面を向いている方が深い。
このことも腸脛靭帯の負荷の軽減に役立ちます。
腸脛靭帯は大腿筋膜張筋という股関節の筋肉とつながっていて、
この筋が引き伸ばされるようなシチュエーションでは靭帯の張りも強くなりますので、
股関節を伸ばしたところから膝を曲げると
大腿骨と腸脛靭帯の摩擦が強くなってしまうのです。
↑股関節の角度に注目。
斜面を向くことで股関節が深く曲がると筋膜張筋が緩みますから
腸脛靭帯も緩み、負荷も和らぐといった効果が得られるわけです。
さらに、後ろ向きで下る際に膝周りで働くのはハムストリングスとなりますので、
外側広筋を極力使わずに済むという点も大きな利点です。
その後も治療で痛みを散らしつつ、後ろ歩き(走り)でくだり
どうにか無事にふもとまで降りることができました。
山頂で目指した時間よりは遅れたものの、1時間での下山となりました。
そして、無事にBEERと温泉にありつくことができ、めでたしめでたし。
しかし、膝が腫れているのにBEERと温泉…
本当はNGなんですけどね(;^ω^)
その後、膝の故障はどうなったかというと、
そもそも軽症だったのと適宜治療した甲斐もあり、
受傷後3日でウエイトリフティングができるまでに回復しました。
明日はウエイトリフティングの試合に出場予定ですが、膝の不安はありません。
でも、受傷時は結構シビアな痛みが出ていて冷や汗ものな状況でした。
患者さんから膝を傷めた時の下山法を聞いていなかったら正直ヤバかったです…(+_+)。
患者さんに感謝です!!
この一件でトレランにのめり込む、ということは今のところはなさそうですが、
今回の反省を踏まえ、この秋の内にもう一度山を走ってリベンジしたいと思います。
次は何とか無傷で走り切ろう!
<おまけ>
○腸脛靭帯炎のセルフケア
・大腿筋膜張筋を中心に股関節外転筋群の過緊張への対処:テニスボールマッサージ
・外側広筋のトリガーポイントへの対処:テニスボールマッサージ
・ペルビックティルト
腹壁の諸筋による骨盤前面の支持性が高まることで下肢の筋バランスの正常化を引き出すことができます。
特に四頭筋や大腿筋膜張筋を含む股関節屈筋群の過緊張の緩和に効果的です。
・POINT!
セルフケアエクササイズを行う前にスクワットテスト(その名の通りスクワットをして痛みの程度や膝の曲がり具合を確認するテストです)と左右の腿上げを行ってからエクササイズに取り組んでみてください。
エクササイズ後にもスクワットと腿上げをしてみると、エクササイズの効果を確認することができます。