宮古on Web「宮古伝言板」後のコーケやんブログ

2011.6.1~。大津波、宮古市、鍬ヶ崎復興計画。陸中宮古への硬派のオマージュ。 藤田幸右(ふじたこうすけ) 管理人

■宮古湾津波浸水シミュレーション

2012年09月15日 | どうなる住宅問題


宮古湾今次津波浸水図
図面はコンセプト図で、正確ではない。
自分の貧しいデータで主観的に書いたもの。


※県や宮古市は宮古湾(市)沿岸の先の「ハザードマップ」レベルの3.11津波浸水ないし浸水深の実態マップを早急に情報公開するべきである。鍬ヶ崎等将来の地区浸水シミュレーションが混乱しているばかりか、当宮古湾沿岸シミュレーションも定まらない理由に、そもそも今次津波の浸水実態が官民共に分からないからと言う事もある。


防潮堤、水門建設によって変わる宮古湾

3.11津波では宮古湾周辺が水浸(みずびたし)になって多大な被害を受けた。しかし、見方を変えれば、宮古湾沿岸への津波の上陸、特に閉伊川、津軽石川への津波の遡上、ここには表現されていない中小河川やその河川敷、さらなる窪地や平地等──への浸水によって、それ以上の津波被害が免れ、特定の場所に極端に片寄る事もなかったと言えるのである。
ところが現在県土整備部や宮古市が進めている宮古湾一律の防潮堤および河川水門建設は、海の景観遮断や海の環境破壊を引き起こし、それ自体が災(わざわい)であるばかりか、市民が期待を寄せる防災効果についても疑問が残るのである。景観や環境については別に述べるとして防潮堤、水門の防災効果をまず検討したい。


シミュレーション三つの問題点
   
1、陸上、河川への侵入水量の行方(ゆくえ) 

言うまでもなく全量が湾奥に殺到する。湾の両岸が重茂半島の絶壁と10.4mの防潮堤、水門群に遮られて津波は全て湾奥に進む。問題なのは現在の湾奥各地区の浸水シミュレーションが全て、単純に3.11の浸水深実績から10.4mの引き算で作られている事である。3.11の湾口、湾央の平地への浸水水量が閉伊川の溯上水量もふくめて全ての水量が計画防潮堤・水門建設後の湾奥浸水深の計算に入っていないのではないかという疑いである。
計算に入れるにせよ、3.11の湾奥の浸水深とは違って、今度の浸水深は人工的に形成されるわけで、シミュレーションも容易でない事は素人でも想像がつく、感覚的には多量複雑すぎてシミュレーション自体がムリなのではないかとさえ思われる。いずれにせよ説明不足があってはならない。平地・河川への浸水による宮古湾海面上昇沸騰への「差し水効果」が消える事など、防潮堤、水門建設のマイナス効果もていねいに説明するべきである。次に述べる「戻り波」襲撃はなんとしても軽視できない。又それぞれ異なる地区地区の前浜、後背地の地形、漁港施設、集落密集度などを無視した全湾一湾原則での10.4m一律では所詮シミュレーション主体=住民の納得がもたないと思われる。

[関連記事] ▲宮古湾の津波防災はどうあるべきか?


2、地区防潮堤、河川水門は全て津波の反射板になる。 

例えば湾奥に殺到した津波は、越流し、川を溯上し、陸地にぶつかり山地を溯上して戻り波になる。その時防潮堤と水門の反射波と一緒になって今度は湾央、湾口に向かう。同時に対岸など両側海岸線にぶつかったヨコ方向の波とその戻り波は、タテの戻り波と合体する。問題はこれら反射波は複雑に干渉して強まり長時間湾内にとどまることである。波の高さと海水量が防潮堤の高さに収まるどころか、局部局部で侵入津波高をはるかに越えるるせり上がり波として防潮堤を越えて湾岸一帯に相当な被害を及ぼす事は想像に難くない。山田湾の例があるという…
そこのところは地区住民が怖れているところである。防潮堤建設、水門建設に反対する理由の第一である。シミュレーションはそれに応えているのかどうか?

[関連記事] ▲▲宮古湾(津波)防災コンセプト


3、北からの津波で破壊が進む宮古湾防災施設

宮古の人なら誰でも思っている事であるが、日本列島西側の南海トラフ地震による大津波は心配していない。心配なのは北の根室・釧路沖、十勝沖、北三陸沖、更にカムチャツカ半島周辺の地震による津波である。湾口が北に向いた宮古湾は直撃の被害を受けるからである。今次3.11津波は震源が比較的南方であったため津波の宮古湾襲撃は重茂半島を大きく迂回しなければならなかった。震源を北太平洋にもつ津波は宮古湾を直射する。
迂回する津波と直撃する津波は表面的な水かさや波の高さは同じに見えても津波の被害は直撃する津波の方が比較にならないほど膨大になる。迂回する津波と直撃する津波は津波が沿岸を撃つスピードが異なるからだ。と言う事はつまり津波の力が異なるという事。(以下下線の言葉の意味は同じものであるが)。破壊のエネルギーが異なるということである。前に同じ力の事を物理学用語で運動の力と言ったが、それは津波が沿岸を撃つスピード(の2乗)に比例する力である。もし迂回する津波が30km/hのスピードで、直撃する津波が100km/hであれば、それぞれの2乗の力の差は11.1倍となる。(超抽象的であるが想像力で補ってほしい。自動車のスピードからの類推でもよい…。実数的な事は専門家に聞き、測量し、計算してもらうしかない)まちがいなく2乗の差はすさまじい…
直撃する津波の運動のエネルギーは浸水力、溯上力であるが何よりも破壊力である。ここで言いたい事は破壊のエネルギーはまず湾岸一帯の防災施設に向かうという事である。湾岸を囲む防潮堤を破壊し、閉伊川水門、津軽石水門を破壊する。防潮堤で津波を阻止するという次元の問題ではない。防潮堤そのものが破壊される。人的、物的被害は想像を超える。同じマグニチュードでも宮古湾では力が異なる。県土整備部の防潮堤の強度はどちら仕様なのか明確にしなければならない。

[関連記事] E=ams2:津波の破壊力の現実とは?

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日本列島のこれからの津波防災は、発想を変えて、防潮堤、水門に頼らない防災でなければならない。ある地区にとってはそういうものはない方がいい。湾口堤防等をふくめて現在計画進行中の防潮堤、水門については大きな疑義がある。これは3.11の教訓というより、むしろ南海トラフ震源津波、北方震源の津波からの教訓というべきである。

また目前の事としては「防潮堤、水門建設によって変わる宮古湾」が悪い方に変わる懸念である。景観、環境、防災のほか湾そのものの生態、また湾と人間の関係の分断、相互の無関心など…

この記事は鍬ヶ崎の高台移転考の一環である。






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