夢のもつれ

なんとなく考えたことを生の全般ともつれさせながら、書いていこうと思います。

題詠;花よりだんご

2006-04-02 | poetry


    花よりだんご

春になるとネコは桜の木の下で
つぼみがピンク色の染まるのを見上げながら
早く咲かないかにゃあと鳴いていました
でも、花が好きなわけでじゃなく
おばあさんがおだんごを作ってくれるからでした

あずきを煮るもったりとしたにおいが
台所からお庭に漂ってくると
割烹着の裾に飛びついて、おねだりをします
小皿のあずきが熱くて味がないので
わふんとくしゃみして、隅にくるまります
「ネコはネコ舌、だんごにゃ目がない」とおばあさんは笑います

縁側で手に水をつけながら、おだんごを丸めるのを
ネコは首をかしげながらおとなしく見ています
子どもの頃から見慣れた桜に目をやりながら
「おだんごいくつ、桜は何回」とおばあさんは唄います

小春日和のある日の縁側で
ネコがひざに乗っても、にゃあと話しかけても
おばあさんは背中を丸めて黙ったままでした
次の春、ネコは桜の木の下で眠っているようでした
花びらが静かに降り積もっていきます


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