○ベートーヴェン交響曲全集:朝比奈隆指揮、大阪フィル
7枚組みの、第5や第7も単独で1枚に収録した贅沢なものですが、演奏ははっきり言っていただけませんね。ベートーヴェンのシンフォニーって、ドライヴ感って言うか、紀貫之じゃないですが、天地を動かすような力動感がなきゃダメでしょう。そういう意味では、特に最初の1、2、4、8辺りのリズムがなんかずれてるような気色悪さがあって、そういうのは朝比奈の指揮で時々感じたことですけど、シンプルな曲だけにはっきりしてしまいました。
後半はそういうことは少ないですが、今度は大阪フィルの弦以外のセクションの弱さが際立ってました。例えば第7は金管、第9は木管が腑抜けたような音程で、まあ朝比奈が私淑したフルトヴェングラーを始めとして名演に事欠かないベトベンwなんですから、わざわざ聴くこともなかったということでした。
○シベリウス交響曲第6番、第7番:ザンデルリンク指揮、ベルリン交響楽団
何度聴いても短い方の第7が好みなんですよね。お行儀よく主題とその展開って感じじゃなく、うねるような流動感が20世紀のシンフォニーらしくていいじゃないですか。
○シューマン・レクイエム、ミニョンのためのレクイエム:サヴァリッシュ指揮、バイエルン放送交響楽団
レクイエムは物語でもちょっと触れたとてもみずみずしい作品で、ドヴォルザークと並んであまり有名ではないだけに一聴をお勧めしたいです。“ミニョンのために”の方は、ゲーテの「ヴィルヘルム・マイスターの修業時代」に出てくる可憐な少女に寄せた作品です。ゲーテの作品はずいぶん昔に読んだのでほとんど覚えてませんが、あんまりおもしろくもない中で、ミニョンが出てくるとほっとしました。主題ともどもシューマンらしいどっちかって言うと歌曲っぽい作品です。
○ブラームス・ピアノ四重奏曲第1番~第3番:ヴァーシャリ、ブランディス、クリスト、ボルヴィツキー
秋こそ、ブラームス!って思って聴きました。先日、シューマンのを聴いたので、比較のつもりもあったんですが、もっとこぉい感じで綿々と語りかけてきて、まだ暑苦しかったかもでした。
○ブラームス・ピアノ三重奏曲第1番:ボザール・トリオ、ホルン三重奏曲:シェベック、グリュミオー、オルヴァル
今の季節にはこっちの方が軽みがあって合ってましたね。特にホルンの方は編成も特異で、とても響きを楽しめる曲です。
○チャイコフスキー交響曲第5番:スヴェトラーノフ指揮、ソヴィエト国立交響楽団
チャイコフスキーは最近聴いてないなって思って3枚続けて聴きました。これは、悪い演奏じゃないとは思うんですが、もっとすごい曲だという気がしてるので満足ってところまではいきませんでした。チャイコフスキーって楽章の終わり方がしばしば陳腐なのはメロディメーカーの宿命なのかなって醒めたことを考えてしまいました。
○チャイコフスキー交響曲第4番:ショルティ指揮、シカゴ交響楽団
舌を巻くほどの緊密なアンサンブルと運動性能で、チャイコフスキーのあふれるばかりの楽想と豪華絢爛なオーケストレーションを楽しめます。こういう演奏だとプレイヤーの性能がアップしたように聞こえます。
○チャイコフスキー未発表作品集:フェドセーエフ指揮、モスクワ放送交響楽団
ソ連時代には演奏されにくかったチャイコフスキーの宗教曲を中心としたもので、ロシア正教による聖歌をアカペラで聴くことができます。どうこういうほどの曲とは思いませんでしたが、日本の合唱曲の伝統のなさ、薄っぺらさとはわけが違いますね。その後で祝典序曲「1812年」を合唱付きで聴くと、ナポレオン軍を撃退して教会の鐘と聖歌が鳴り響くところがよく理解できました。ライヴなので大砲なんかでてきませんけどねw。シベリウスの「フィンランディア」(敵はもちろんロシアです)も戦争や愛国心に宗派は違えどキリスト教が持ち込まれてるところが同じ趣向ですが、まあそういうもんでしょう。共産主義よりましでしょうし。未発表作品集ってなってますが、ジャケットの英語では“The Forbidden Works”、これってソ連時代に禁止されていたって意味じゃないの?