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ニュース番組にビョークがゲストで出てきたときには、そのおちつかない様子から、なんだかシーツをかぶって爪を噛んでいるような女の子だなと思いました。歌い始めると、何だかどきどきしてきて、「あ、この子は自分の中に歌を持っているんだ」と感じました。しかもその歌は痛々しいほどで、あのジャニス・ジョプリンを思わせるものでした。声がハスキーなだけではありません。ふつうの人は歌をどこからか作り上げているのに、自分の中に歌があって、自然とほとばしり出るようなところが同質なのです。
その次は、映画“Dancer in the Dark”でした。有り体に言って、映画としては完成度が高いとは思えないものですが、彼女の圧倒的な存在感と歌の持つ力によって、唐突なストーリー展開がかえって非現実感と奇妙な生々しさを感じさせるものでした。彼女が幸せそうに工場で歌っても何か空虚に感じられ、殺人を犯して嘆き悲しんでも額面どおりに受け取れない、なぜなら彼女は現実を見てはいないからという二重感覚が最後になって、解消され、彼女の歌と現実が残酷に一致するのです。そう、これも痛々しい映画でした。
彼女のアルバムはとても音の作りが凝っていて、ストレートなロックを、ちょっとかわいそうなくらいチープなバックバンドで歌っていたジャニスとは大違いですが、結局は彼女たちのヴォーカルでもっている点では同じように思えます。どんな伴奏でもビョークはビョークですし、だからこそ思いっきり自由に発想を飛ばしてみたくなるのでしょう。
このブログの始めの方にフィットネス・クラブに通っていることを書きましたが、今も続いていて、その頃よりももう少し効果が出てきたようです。ジョギング・マシンやウエイト・トレーニングのときには、HDDプレイヤーを聴いていることが多いのですが、クラシックではノリが悪いので、最近はポップスを聴いています。その中でもお気に入りの一つがビョークというわけです。