今回のシンガポール行きはちょうど旧暦の7月15日(2016/8/17)に当たりました。いわゆる「中元」です。この中元というのはどうも中国の思想での先祖供養の日らしいですが、それが仏教と習合して盂蘭盆会、施餓鬼などという習慣になったようです。中国でも福建省を中心にした地域の習俗らしく、華僑とともに東南アジアに広まっているようです。
十数年前に夏休みにシンガポール旅行したときに、「ハングリーゴーストフェスティバル」なんて、街なかに書いてあった記憶があります。当時は中国語わからなかったので英語の方を覚えているんですね。Hungry Gohstって「餓鬼」の直訳ですね。つまり「施餓鬼」ってこと。
日本にも盂蘭盆会は伝わり、お盆として先祖供養をし、中元は贈答をし合う形に落ち着いていますね。日本の場合は、自分の先祖ばかりに意識が向いていて、そのほかのウロウロしている霊を供養するという感覚はあまりないと思われます。私だけ?
さて、私が見に行った「歌台」はもともとその中元の行事です。今では歌謡ショーとして一年中行われるようになっているようですが、本来は地獄の釜の蓋が開いて地上にさまよっている霊たちを喜ばせて鎮めるのが目的。歌台の他にも、道端や店先で供物を上げて線香をたいたり、紙のお金を燃やしたり、街角では旧暦7月一ヶ月にわたって供養が繰り広げられてます。(台湾とか通ってると夏だけでない気がします。季節ごとに何かしらあるのかも。詳しい方教えてください。)
前置きが長くなりましたが、彷徨える亡霊たち〜好兄弟ほうひゃでぃ〜を慰めるための歌台には、彼らの専用席があるのが習わし。
通常は最前列一列を空席にするという形で、そこには座ったらいけないんだよね、というのは知っていたんですが、今回行ったチャイナタウンの歌台ではさらにディープなものを見ました。
ステージ前の最前列に長方形のテーブルでしたが10人用くらいの宴会席が設けてありました。各種飲み物が缶やペットボトルでドンドン置いてあり、グラスもたくさん〜多分一席あたり3個くらいずつ〜、そして興味深いのは、その宴会席の椅子には紙のお金と大きな線香が載せてあったことです。線香がお客さんのように見えました。
まさに、好兄弟への最大級のもてなし。
◆開始前に線香に火をつける理事さん。
ここの歌台は、潮州街という潮州出身者の子孫の会が開いたもののようです。好兄弟席のお世話は「理事」と呼ばれていた世話人のおじさんたちがやってましたが、皆さん、全身に入れ墨が入ってるような方ばかりで、なんのお仕事かしら??その理事さんたちが、 おひねりの赤い封筒でおしりポケットをパンパンに膨らませつつ(これから配りまくる用)、 ステージの端にくわえタバコで腰掛けて、ステージ上の芸人さんたちに何やらリクエストを耳打ちしたり、自分たちの席の方におりてこさせてみたり、一言で言うと、とってもガラが悪いんですが、その方々が、かいがいしく亡霊さんたちにお酌をしてまわってるんです。ジュースやお茶やビールや何やかやを、ステージが始まってからも定期的に注ぎに来るのです。流石に好兄弟の皆さんはごくごくとは飲まないのでコップの飲み物は減りません。それでも、ちびりちびりとお酌をして回るんです。これは見てて面白かったです。信心深いんだなぁと思いました。
お酌
お酌
この歌台、総じてかなりローカルでとても興味深かったです。多分、歌台が始まった頃のスタイルを一番残しているんじゃないのかな〜なんて思いました。 同行者の踏台さんがブログに書いていらっしゃる のでリンクしておきますね。面白いので是非お読みください。
http://yaplog.jp/carodiario/archive/757
もう一つ、中元節によく行われる行事にオークションがあるらしいです。縁起を担いでやるらしく、サザビーズなどのオークションとは違い、どうでもいいようなものが取引されるそうです。最終日に行ったトアパヨの歌台会場では隣でこのオークションやってました。いつか、これもじっくり観てみたいけど、言葉かわからないから辛いかなー。
オークション会場はすべて宴会席でした。
さて、来年の中元は9月5日のようですね。
また歌台行こうかな。