(3) ショーロの構成

2012-07-09 | Essay
ショーロの曲は様式的な側面が強いので、今回はその構成についてお話します。

ジャズのアドリブを深く味わう為にはテーマのメロディーとコード進行を頭の中で鳴らす事が必要なように、ショーロも基本構成を理解していると演奏者でなくともさらなる魅力に気付けるのではないでしょうか。


ショーロの曲は通常、ABC3つのパートから成るロンド形式という構成を持っています。
ABACAと、Bメロのあと一度Aに戻り、Cを通過したあとAで曲が終わります。
実際は真ん中のA以外は繰り返しを伴いますので、AABBACCAというのが一般的な構成です。

ライブやホーダ・ヂ・ショーロ(ショーロのセッション)などでは、最後のAのあと再びBやCに戻って演奏を続ける事もありますが、最後は必ずAで終わる事に変わりはありません。

ABC3つのパートはそれぞれ4分の2拍子16小節で、さらにこの16小節は前後半の8小節ずつで対になっている場合が多く、1~4小節と9~12小節は同じ旋律、または同じコード進行を持つ事もよくあります。この16小節の感覚が体で分かってくるとショーロが俄然身近なものに感じられるようになります。

次に、3つのパートの調性について見てみましょう。
一般的によくある転調としては以下の二つ。

1. A(主調)→B(平行調)→C(下属調) 
 平行調とは主調と同じ調号を持ち、長調↔短調の関係にある調です。
 下属調とは主調の完全4度上(完全5度下)の調です。
 主調がGの場合、G→Em→C (例:Diabinho Maluco)

2. A(主調)→B(平行調)→C(同主調) 
 同主調とは主調と同じ主音を持ち、長調↔短調の関係にある調です。
 主調がDmの場合、Dm→F→D (例:Naquele Tempo)

1は主調が長調の場合に、2は主調が短調の場合に多く見られる転調です。

さてここまで読んで頂いて、ショーロをよくご存知の方からはツッコミが入っている事でしょう。
そうです、あまりにも例外が多いのです。しかも有名曲、人気曲の中に。


最後に代表的な(?)例外をいくつか挙げて今回のエッセイを終わりたいと思います。

Noites Cariocas:ショーロといえばこれですが、いきなり例外です。Cメロがありません。
しかもABともに32小節。Receita de Samba、Doce de Cocoも同じパターン。

Bole-Bole:ロンド形式、転調は上記1の通りですが、ABCすべて倍の32小節。
ピシンギーニャのMinha Genteも同様。長いです。

Saxofone, Porque Choras?:ロンド形式、転調は上記2の通りですが、Bのみ16小節でACは32小節。変則的ですが旋律が自然で何の違和感もありません。

他にも28小節のAメロ(Sarau para Radames)や、8小節のBメロ(Tres Estrelinhas)などがあります。

これらはすべて定番と言える曲ですし、もはや例外ではないのかもしれませんね。

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