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支流からの眺め

富士山(1)二回目の登頂

 富士は日本一の山だ。ダントツの高さ(3776m、2位は北岳の3193m)だけでなく、成層火山の優美な姿でも圧倒的だ。古くから信仰や芸術の、近代では気候学や地質学の対象となり、年間の登山者数は約20万人だ。2013年には、「富士山-信仰の対象と芸術の源泉」の銘で世界文化遺産に登録された。

 その富士山に数年ぶりに挑戦した。前回は吉田口からだったので、今回は富士宮口とした。富士宮大社の参詣は、過去に済ませたので免除とする。出発点の標高は吉田口登山道より約百米高い(2400m)。しかし、最初の山小屋(雲海荘)まで20分程歩いただけで、登山意欲が失せそうになった。

 夏の太陽は容赦なく我が身を焼き尽くす。登山道はスコリア(火山礫)が滑って歩きにくく、溶岩の露出した所は急な段になる。頂上までこの道なりが続くのだ。七合目下まで来ると3000mを越え、空気が薄くなりすぐに脈拍が上がる。六根清浄を唱えると少し元気が出る。かくて、4時間強でなんとか九合目の小屋に着いた。

 小屋に入れば寝る場所をあてがわれ、休む間もなく夕食だ。定番のカレーが出てくる。まずくはないがそう旨くもない。温かいお茶はおいしいが、無料のおかわりは1杯だけだ。早々に床につく。午前1時を回ると、小屋の中が騒々しくなる。睡眠というより仮眠を済ませて懐中電灯をつけて出発だ。

 登山道には人が並ぶ。涼しいからか高地順応したのか、比較的楽に登れる。寒い中朝日岳でご来光を待つ。まず東の空が茜色に染まる。輝かしさが増して、その色合いが薄まると同時にお天道様が顔を出す。これは代え難い体験だ。その後は荒々しい火口(直径780m、深さ240m)を巡り、最高地点の剣が峰に立つ。

 

 

 

 下山も容易でない。傾斜はけっこう急で、岩と礫の繰り返しで歩きにくい。注意しているが何度か転びそうになる。通行の譲り合いの時は、辛そうな姿が昨日の自分に重なり励ましの声が出る。好学のため宝永山の火口縁まで往復し、無事に下山した。



 富士登山の危険は繰り返して報道されている。酸素濃度も下がるし、真夏でも頂上付近は零度となり、風、特に突風は強烈だ。また余り言われないが、細粒子状の火山灰も厄介だ。呼吸器や電子機器の障害につながる。天候に恵まれ大過なく帰宅できたのは神様の御加護のお陰だった・感謝。(続く)

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