公共事業の見直しは急務
「日本アズナンバーワン」とか、「21世紀は日本の時代」と言われたのは、20数年前のことだった。ところが冷戦崩壊後の国境を越えた激しい国際競争から日本は脱落し経済は衰退し、国民の暮らしは「一億総中流」から「貧困率」が先進国の中で下位の国に転落した。これは、国家としての長期的ビジョンに裏付けられた戦略の欠如と問題を先送りする無責任な体質が原因だろう。その典型な例が公共事業に見て取れる。
八ッ場ダム、川辺川ダムは、長い間に必要性に変化が生じ、建設目的の治水や農業利用の両面で疑問が呈され、10数年前から工事の見直しが叫ばれてきたが、惰性で今日に至った。日本の公共事業費のGDPに占める割合は、欧米に比べ極めて高くこのような状態が40年近く続いてきた。その上、近年は無駄な上、自然環境を損なう公共事業が多くなってきた。
アジア各国の経済が大きく発展し、かっての日本がアジア各国の経済を引っ張って行く雁行型から並行型の競争の時代に移行した時代の競争に勝ち残るためには、政権交代をきっかけに従来のシガラミにとらわれず、公共事業を“リセット”することは避けて通れない課題である。
八ッ場ダム建設の中止が喧しいが、空港の整備は急を要する。早急に手を打たなければ21世紀の日本はアジア各国の後塵を拝する没落した国になること請け合いだ。空港問題も誰かが何時は取り組まなければならぬ課題だった。
空港事業の見直しを加速させる
日航の再建問題
国は、国土の総合的開発について「国際交通拠点の整備に際しては、円滑な国際交流を図るため、例えば24時間受け入れ可能な国際空港等交通拠点の質の向上が求められよう。 さらに、国際交通拠点から国内交通ネットワークへの円滑な連続性を確保するため、国際化に対応した質の向上が国内交通ネットワークに求められよう。例えば、国際交通拠点が国内交通拠点と離れている場合には、両者を連結する交通施設の整備を図るといったことが重要になる」(昭和59年11月「四全総 長期的展望作業の取りまとめ『日本 21世紀への展望』・・・・国土空間の新しい未来像を求めて・・・・」(国土庁計画・整備局編152ページ)と国土空間の未来像を描いていた。
ところが、今年6月4日に開港した静岡空港静は、日本の航空行政の戦略性の無さや地元エゴの代表のような空港である。昭和30年代から浜松市の航空自衛隊基地を民間と共用するよう地元経済界が働きかけてきたのが発端であるが、開港した空港は、滑走路が短く大型機の離発着が不可能であル。近くに中部国際空港もあり、空港の下には新幹線も走っている。これでは、採算にあわないことは素人でも分かる。
静岡県航空部が9月1日発表した静岡空港の9月の利用状況によると、国内6路線の搭乗者数は計3万8932人で、平均搭乗率は60.6%だった。路線別にみると、最も高かったのは札幌線79.0%。次いで沖縄線73.7%、福岡線62.9%、鹿児島線48.5%、熊本線40.2%、小松線28.4%の順だった。
このような状況下、経営再建中の日本航空が、2011年度までに国内線の2割弱に当たる29路線と国際線21路線の計50路線の廃止を打ち出した。日本航空は、国内7空港、海外9空港で路線運航の撤退を検討しており、国内で神戸空港、静岡空港、北海道の釧路、帯広両空港も候補に挙がっている。このような結末に至ったのは、長期的展望に基づく戦略が無く公共事業を進める日本の行政・財界の体質を現している。
東アジア各国の後塵を拝する日本の空港
神戸港、横浜港など日本の港湾は1960年代ころまでは、貨物取り扱い量が世界No10以内に入っていた。ところが「CONTAINERISATION INTERNAIONAL YEAR BOOK 2008」によると2005年のコンテナ取り扱い個数は、東京港23位、横浜28位、名古屋33位、神戸港38位であるのが、1位シンガポール、2位ホンコン、3位上海、4位中国・深、5位韓国釜山、6位高雄(台湾)、11位中国・青島、13位中国・寧波である。
日本の港湾はとっくにアジアの物流の流れの幹のような主流から外れた”枝”流である。 日本の空港は、日本の港湾が辿った衰退の二の舞になる瀬戸際に位置している。今から15年前、関西空港が開港したが、この時点で東アジア各国でハブ空港の争奪戦が激化していた。成田空港の整備のもたつきを知った韓国は新ソウルメトロポリタン空港、ホンコン、タイ、マレーシア、シンガポールなどでも成田や羽田を上回る大規模な空港が整備されつつあった。今や韓国・仁川空港、シンガポールのチャンギ空港は東アジアのハブ空港に成長した。日本人が外国へ行く場合、韓国・仁川空港経由の便を利用したほうが便利である。
15年前の日経の記事「覇権喪失の危機」
空港の整備も長期的展望に基づいた戦略が欠落し、雨後の筍のように中途半端な空港をあちこちに作った。空における人・物の流れは日本を素通りする流れが加速している。空港整備についても見直しが不可欠で、急を要する。 ダム工事の見直しだけでなく、空港、港湾など公共事業の抱えた問題を解決し他国に比肩しうる空港・港湾の建設は、貿易立国を標榜する日本にとって早急に取り組む課題だ。
建設中の”飛んでくる飛行機がない”茨城空港
「無駄ゼロ」実現のためには痛みを伴う
利害関係者が既得権を簡単に手放すと考えるのは幻想だ。鳩山政権が、財源を捻出するため「無駄をゼロ」にするのはよいが、既得権に踏み込むことなく「無駄ゼロ」を実現することは、無責任だ。無駄の削減のためには、国民に痛みを伴うことがあると鳩山政権は訴えたことが無い。マニフェストは、財政的には非現実的な甘い公約のオンパレードであるが、財政再建をどうするのか、増税はどの程度必要なのか、将来を展望した政策を展開すべきだろう。
日本を日教組的に見直したり中国や韓国の属国化のような政策からの見直しは断固反対だが、政権交代で、自公政権で出来なかった各種公共事業のあり方を“リセット”してみることは無意味ではない。
「日本アズナンバーワン」とか、「21世紀は日本の時代」と言われたのは、20数年前のことだった。ところが冷戦崩壊後の国境を越えた激しい国際競争から日本は脱落し経済は衰退し、国民の暮らしは「一億総中流」から「貧困率」が先進国の中で下位の国に転落した。これは、国家としての長期的ビジョンに裏付けられた戦略の欠如と問題を先送りする無責任な体質が原因だろう。その典型な例が公共事業に見て取れる。
八ッ場ダム、川辺川ダムは、長い間に必要性に変化が生じ、建設目的の治水や農業利用の両面で疑問が呈され、10数年前から工事の見直しが叫ばれてきたが、惰性で今日に至った。日本の公共事業費のGDPに占める割合は、欧米に比べ極めて高くこのような状態が40年近く続いてきた。その上、近年は無駄な上、自然環境を損なう公共事業が多くなってきた。
アジア各国の経済が大きく発展し、かっての日本がアジア各国の経済を引っ張って行く雁行型から並行型の競争の時代に移行した時代の競争に勝ち残るためには、政権交代をきっかけに従来のシガラミにとらわれず、公共事業を“リセット”することは避けて通れない課題である。
八ッ場ダム建設の中止が喧しいが、空港の整備は急を要する。早急に手を打たなければ21世紀の日本はアジア各国の後塵を拝する没落した国になること請け合いだ。空港問題も誰かが何時は取り組まなければならぬ課題だった。
空港事業の見直しを加速させる
日航の再建問題
国は、国土の総合的開発について「国際交通拠点の整備に際しては、円滑な国際交流を図るため、例えば24時間受け入れ可能な国際空港等交通拠点の質の向上が求められよう。 さらに、国際交通拠点から国内交通ネットワークへの円滑な連続性を確保するため、国際化に対応した質の向上が国内交通ネットワークに求められよう。例えば、国際交通拠点が国内交通拠点と離れている場合には、両者を連結する交通施設の整備を図るといったことが重要になる」(昭和59年11月「四全総 長期的展望作業の取りまとめ『日本 21世紀への展望』・・・・国土空間の新しい未来像を求めて・・・・」(国土庁計画・整備局編152ページ)と国土空間の未来像を描いていた。
ところが、今年6月4日に開港した静岡空港静は、日本の航空行政の戦略性の無さや地元エゴの代表のような空港である。昭和30年代から浜松市の航空自衛隊基地を民間と共用するよう地元経済界が働きかけてきたのが発端であるが、開港した空港は、滑走路が短く大型機の離発着が不可能であル。近くに中部国際空港もあり、空港の下には新幹線も走っている。これでは、採算にあわないことは素人でも分かる。
静岡県航空部が9月1日発表した静岡空港の9月の利用状況によると、国内6路線の搭乗者数は計3万8932人で、平均搭乗率は60.6%だった。路線別にみると、最も高かったのは札幌線79.0%。次いで沖縄線73.7%、福岡線62.9%、鹿児島線48.5%、熊本線40.2%、小松線28.4%の順だった。
このような状況下、経営再建中の日本航空が、2011年度までに国内線の2割弱に当たる29路線と国際線21路線の計50路線の廃止を打ち出した。日本航空は、国内7空港、海外9空港で路線運航の撤退を検討しており、国内で神戸空港、静岡空港、北海道の釧路、帯広両空港も候補に挙がっている。このような結末に至ったのは、長期的展望に基づく戦略が無く公共事業を進める日本の行政・財界の体質を現している。
東アジア各国の後塵を拝する日本の空港
神戸港、横浜港など日本の港湾は1960年代ころまでは、貨物取り扱い量が世界No10以内に入っていた。ところが「CONTAINERISATION INTERNAIONAL YEAR BOOK 2008」によると2005年のコンテナ取り扱い個数は、東京港23位、横浜28位、名古屋33位、神戸港38位であるのが、1位シンガポール、2位ホンコン、3位上海、4位中国・深、5位韓国釜山、6位高雄(台湾)、11位中国・青島、13位中国・寧波である。
日本の港湾はとっくにアジアの物流の流れの幹のような主流から外れた”枝”流である。 日本の空港は、日本の港湾が辿った衰退の二の舞になる瀬戸際に位置している。今から15年前、関西空港が開港したが、この時点で東アジア各国でハブ空港の争奪戦が激化していた。成田空港の整備のもたつきを知った韓国は新ソウルメトロポリタン空港、ホンコン、タイ、マレーシア、シンガポールなどでも成田や羽田を上回る大規模な空港が整備されつつあった。今や韓国・仁川空港、シンガポールのチャンギ空港は東アジアのハブ空港に成長した。日本人が外国へ行く場合、韓国・仁川空港経由の便を利用したほうが便利である。
15年前の日経の記事「覇権喪失の危機」
空港の整備も長期的展望に基づいた戦略が欠落し、雨後の筍のように中途半端な空港をあちこちに作った。空における人・物の流れは日本を素通りする流れが加速している。空港整備についても見直しが不可欠で、急を要する。 ダム工事の見直しだけでなく、空港、港湾など公共事業の抱えた問題を解決し他国に比肩しうる空港・港湾の建設は、貿易立国を標榜する日本にとって早急に取り組む課題だ。
建設中の”飛んでくる飛行機がない”茨城空港
「無駄ゼロ」実現のためには痛みを伴う
利害関係者が既得権を簡単に手放すと考えるのは幻想だ。鳩山政権が、財源を捻出するため「無駄をゼロ」にするのはよいが、既得権に踏み込むことなく「無駄ゼロ」を実現することは、無責任だ。無駄の削減のためには、国民に痛みを伴うことがあると鳩山政権は訴えたことが無い。マニフェストは、財政的には非現実的な甘い公約のオンパレードであるが、財政再建をどうするのか、増税はどの程度必要なのか、将来を展望した政策を展開すべきだろう。
日本を日教組的に見直したり中国や韓国の属国化のような政策からの見直しは断固反対だが、政権交代で、自公政権で出来なかった各種公共事業のあり方を“リセット”してみることは無意味ではない。