日本側の動き
(その1)森本防衛相、都の尖閣上陸を許可すべきだと見解
読売新聞 7月21日(土)12時33分配信
森本防衛相は21日午前、尖閣諸島(沖縄県石垣市)の購入計画を進める東京都が政府に島への上陸許可の申請を予定していることについて、「必要な目的がはっきり付されれば、受け入れるのが適切な処置だ」と述べ、申請は許可すべきだとの考えを示した。東京都内で記者団に語った。
防衛相には上陸許可を判断する権限はなく、個人的な立場で見解を示した。政府は国有化を目指しているため、都の許可申請への判断は当面保留する方針を固めている。 最終更新:7月21日(土)12時33分
(その2)地権者の弟が都内で講演 都の上陸拒否せず 尖閣購入計画
産経新聞 7月20日(金)20時24分配信
東京都が購入を目指す尖閣諸島(沖縄県石垣市)について、地権者男性(70)の弟、栗原弘行氏(65)が20日、都内の日本外国特派員協会で講演し、都から国への上陸申請について「所有者側の意思としては当然、上陸させざるを得ない状況」と、拒否しない考えを示した。
上陸許可について栗原氏は、国と来年3月末まで賃貸借契約がある点を踏まえ「管理義務者である借り主(国)が判断すること」と明言を避けたが、都の上陸は価格算定のためと指摘、地権者側として理解を示した。国への直接売却は「いきなり国にということは考えていない」とした。
藤村修官房長官は同日の会見で栗原氏の発言について「国は都や地主と連絡をしており、それ以外の方がどう発言されるかはあまり意味がない」と述べた。栗原氏は以前は北小島と南小島の所有者だった。国有の大正島を除く4島は現在、栗原氏の兄と妹が所有している。
中国・台湾の反応
(その1)「日本優勢」が78% 尖閣紛争で中国ネット調査
MSN産経ニュース7.21 14:43
中国共産党機関紙、人民日報系の環球時報のウェブサイト「環球網」は21日までに、沖縄県・尖閣諸島(中国名・釣魚島)をめぐる日本と中国の紛争に関するインターネット上の世論調査結果を発表、野田政権の尖閣諸島国有化方針などについて61・4%が「日本は本気だ」と答え、78%が「(紛争で)日本が優勢」とした。
(その2)尖閣問題で中国元少将が「中国海軍、海保・海自の力に及ばぬ」
台湾紙報道 2012.7.20 18:59
日本政府による沖縄県・尖閣諸島の国有化方針を受け、同諸島の主権を主張している中国海軍の元少将が「今の中国海軍は日本の海保、海自の実力に及ばない」と分析していることを20日、台湾各紙が報じた。台湾の与党・中国国民党寄りの聯合報や中国時報が、中国紙、環球時報の電子版、環球網(19日)の報道として伝えた。それによると、中国海軍装備技術部長だった鄭明・元少将は、日本の海上保安庁の巡視船や海上自衛隊の護衛艦、潜水艦の性能、艦載ヘリとの連携、運用能力の高さなどを列挙した。(台北 吉村剛史)
(その3)人民日報、尖閣で武力行使示唆
MSN産経ニュース2012.7.13 22:47
【北京=川越一】中国共産党機関紙、人民日報は13日付のコラムで、日本政府の国有化方針など沖縄・尖閣諸島(中国名・釣魚島)をめぐる日本の行動を非難し、武力衝突の可能性をちらつかせて挑発した。
同紙は、2010年の中国漁船衝突事件で中国人船長が拘束された一件や、離島の命名や購入計画、視察や周辺海域での釣りなどを列挙して「茶番」と呼び、「短絡的な戦略だ。(中国を)挑発することで自分に陶酔している」と断じた。 そして、「国と国との関係は子供の遊びではない」として、「(挑発が)度を越せば、釣魚島問題を制御できなくなる危険性がある」と強調。「日本の政治家たちはその覚悟があるのか」と詰め寄った。
同紙は今年に入ってから度々、尖閣諸島を「核心的利益」と表現しており、今回も「国の核心的利益について、中国は半歩でも退くことはない」と強硬な論調を展開。武力行使もいとわないことを示す言葉を使うことで、日本側の動きを牽制する意図がうかがえる。
(その4)尖閣問題で「日本と一戦も辞さない」中国高官
MSN産経ニュース2012.7.13 00:24
中国国土資源省国家海洋局が所管し、海洋権益における法執行をになう「海監総隊」の孫書賢副総隊長が、「もし日本が釣魚島(沖縄県・尖閣諸島の中国名)問題で挑発し続けるなら、一戦も辞さない」と発言したと、台湾の有力紙、聯合報などが中国海南省海口発として12日の電子版で報じた。「2012海峡両岸南海問題学術会」の席で孫氏が11日に語ったという。孫氏は、同時に南シナ海の領有権問題でベトナムやフィリピンについても「一戦を辞さない」と発言したとされる。(台北支局)
中国は周辺国との武力行使をためらわない好戦国である
(その1)インドとの国境紛争
中国は、1954年に中印両国は平和五原則を声明し、紛争の平和的解決を確認したが、1959年にチベット反乱が起こりダライ・ラマ14世がインドに亡命したのを契機に、同年8月と10月に両国の東部および西部国境で衝突が発生した。ついで1962年10月、中国軍は東部および西部国境で大規模な攻撃をしかけインド軍を敗走させた。中印は平和五原則で表面的には友好を繕いながら、相手が弱いと見るや武力行使をためらわない国である。
(その2)ソ連との国境紛争
1950年代後半のフルシチョフ首相によるスターリン批判以降、ソ連と中国の間では関係が悪化した。中ソ対立により両国間の政治路線の違い・領土論争をめぐって緊張が高まり、1960年代末には延長約4400kmの国境線の両側に、ソ連軍66万人、中共軍81万人が対峙し、北京のソ連大使館に対する紅衛兵の襲撃や、国境地帯での発砲事件など両国の小規模な衝突は度々起きた。
1969年3月2日、極東のウスリー川の中州・ダマンスキー島(珍宝島)で、ソ連側の警備兵と中国人民解放軍兵士による衝突が起こった。これに関しては双方とも「先に相手が攻撃を仕掛けた」と主張している。戦闘で31人の死者と14人の負傷者を出したソ連軍は、中国東北部国境に展開している中共軍に砲撃を行い、ダマンスキー島に部隊を突入させた。ソ連側の死傷者80人、中国側の死者800人であった。ソ連側によると、中共軍が民間人・農民・家畜に部隊を囲ませながら前進する戦術を取ったという。
7月8日には中ソ両軍が黒竜江(アムール川)の八岔島(ゴルジンスキー島)で武力衝突し8月にはウイグルで衝突が起きるなど、極東及び中央アジアでの更なる交戦の後、両軍は最悪の事態に備え核兵器使用の準備を開始した。1969年9月に北ヴェトナムのホー・チ・ミン国家主席が死去し、ソ連のコスイギン首相はハノイでの葬儀に列席した後北京に立ち寄り、中国の周恩来と会談して政治解決の道を探り、軍事的緊張は緩和された。
中国もソ連のともに共産主義の国であったが、共産主義の路線や国境を巡る対立が武力紛争をもたらした。
(その3) ベトナムに対する“懲罰、制裁”
中国は、ベトナムとも戦争をした。1979年2月17日から同年3月16日にかけて中国とベトナムと戦った。中国軍は雲南、広西方面から侵攻し、ベトナム北部の主要都市ランソン、カオバン、ラオカイを占領した。中国は侵攻の目的をベトナム軍の国境侵犯に対する「自衛的反撃」であり「懲罰、制裁」であると主張したが、領土問題のほか、ベトナム戦争中の中国の支援にもかかわらず、ベトナムのソ連との提携強化、カンボジアにおける親ベトナム政権の樹立、華僑政策に不満があった。この戦いは中国軍が近代戦に不慣れなため大損害を蒙り、自主的撤退に追い込まれた。中国もベトナムも共産主義の国であったが、中国にとって共産主義とは人民統治の便法に過ぎず、ベトナムは所詮、東夷西戎北狄南蛮・化外の民、懲罰の対象であった。
(その4)国共内戦、朝鮮動乱など
中国は、インド、ベトナム及びソ連との武力対決だけでなく朝鮮動乱(1950年6月25日から1953年7月27日休戦)では、国連軍が38度線を越え中朝国境に迫るや、10月19日、中共軍大部隊が鴨緑江を越えて参戦した。また自治を求めるトルキスタンのウイグル族の弾圧、チベット侵攻など周辺地域を併呑するため武力行使を繰り返してきた。中国は国共内戦を経て政権を樹立した、文字通り“政権は銃口から生まれた”国である。中国の好戦的な体質を軽視すべきではない。
中国との対決に万全の手立てがあるか!
森本防衛相は「必要な目的がはっきり付されれば、受け入れるのが適切な処置だ」と述べ、申請は許可すべきだとの考えを示した。防衛担当大臣が尖閣諸島問題に言及することは、他の閣僚、政治家の発言と異なり軍事的な意味合いを帯びる。“軍の最高責任者”は、尖閣諸島防衛のため“軍を動かす”ことを模索しているのではないかとのメッセージを中国側に送ることになる。単なる個人的見解とは受け取られない可能性がある。
注目しなければならぬことは、日本側の動きに対抗し中国は、政府関係者や共産党機関紙が核心的利益防衛のため武力行使も辞さぬとの態度を表明し、徐々にその強さをエスカレートさせていることである。日中双方の戦力の比較や中台世論の好戦的意識の高揚などを報道することにより日本に武力行使の可能性を予告させるとともに、国内の態勢固めを図っていると観察できる。
懸念すべきことは、日本側は日中間が抜き差しならぬ事態に至らぬような外交努力をしているのか、事に臨んで国を挙げた対決が出来る態勢作りをしているかである。相手は老獪な好戦国家である、対応策の確立は急を要する。
先の尖閣諸島における中国漁船と巡視船の衝突事件と同じように、武力対決に至らぬまでも中国の“経済制裁”に日本側が再び腰砕けになれば、日本の地位の低下、存在感の低下は極めて大きいものとなる。その損失は計り知れない。尖閣諸島は日本の領土であるから、中国の武力行使を考慮しなくていいという段階は過ぎつつあると観察される。
尖閣諸島に自衛隊を配置して防衛すると言うのは簡単であるが、尖閣諸島は小さな島でむき出しの平坦地か樹木が生い茂る山からなっている。陣地構築もない小島に部隊を配置しても砲火に堪えられない。また太平洋戦争における太平洋各地の島嶼防衛の戦いが示すように絶海の離島の防衛は極めて困難である。日本側に制空権、制海権が無い限り補給も出来ない。中国が数百隻の魚船に兵員を乗せ襲来、周辺海域で遊弋させれば日本の艦船は衆寡敵せず、島への接近・上陸は阻止される。交戦すれば敗北も免れない。島々へ敵兵の上陸を許せばこれらを掃討することも、奪回することも、これまた極めて困難である。
野田首相にも森本防衛相にも、中国と一戦を交えてでも尖閣諸島を防衛するとの決意の程が伺われない。
中国と対立すれば”東京五輪”は霧散する!
野田首相が五輪の開会式に出ようが出まいが”東京五輪”は期待出来ない。中国は石原都知事を蛇蝎のごとく嫌っているので、彼の面子を潰すため最大限工作すると覚悟すべきである。しかも2020年における日中の国力や世界における存在感の差は今以上に拡大し、中国になびく国が増加する。中国の妨害工作は奏効する。