退会する機会を逸して今年もまだ会員であるが、まもなくそれも終わるので、記憶としてここに残すことにした。「農村振興に携わる幅広い分野の技術者等から構成され」ると言われる組織がある。全国農村振興技術連盟というもので、もとは全国農業土木技術連盟と称していた。「農業土木」という、「土木」とは枠を別にした技術者を対象としていて、「土木」から見れば枠外の人間に見られているかもしれない。印象に過ぎないが、いつも「土木」関係の組織に頭を下げているから、立場は察してほしい。そこに参加している技術者のほとんどは行政関係の技術者、あるいはその関係団体の技術者、そして民間のその関係の仕事をしている設計、あるいは資材を供給している事業者の技術者といったところ。そこでは毎月『農村振興』という機関誌を発行している。見開き2ページの記事がほとんどで、15名ほど投稿者の記事が掲載される。内容は技術的というよりは2ページに限られているから紹介記事的なものが多い。間もなく900号という雑誌だから、12で割れば75年にもなる。その通り、連盟の発足は昭和22年と言う。
会社から「入れ」と言われて入会したが、もちろん会費は自費である。したがって退職すればおおかた退会する。冒頭「機会を逸した」と記したのは、そもそもいつ退会届を出すのか分からなかった。年度当初「辞めたい」と言ったら「新年度に入っているから1年間はダメ」と言われて今年も入っている。もう何年も前の、わたしが現役だった時代のこと。県庁を通じて会社の「上」にこの機関誌の末尾に何編か掲載されている「会員だより」に投稿してほしいと依頼があった。わたし的には「依頼原稿」と察したが、編集側がどう思っているかは全く知る余地もない。依頼されたので投稿した、というわけである。仕事もピークとなる数年前の10月、「10月末日」を締め切りとされていたので、忙しい中をまとめて原稿を送った。ところがなかなか掲載されない。依頼原稿と思っていたからどこかで掲載されると思っていたのだが、結局不採用だった。依頼された、という意識があったから「何で…」と思ったものだが、そもそもこの組織に加わっている団体の中でも立場は下の方だから「仕方のないこと」と諦めた。
さすがに依頼原稿なのに不採用なら、「不採用」だと知らせてくれればよいのに、それも全くなかった。あらためて原稿の内容を思い出すと、あちらにしてみれはせ「内容に問題があった」ということなのかもしれない。そもそもこの機関誌を毎月受け取るたびに思っていたのは、「良いことしか書いてない」。行政関係者によくあるパターンの書きぶりばかり。「農村振興」を主旨にしてはいるものの、その農村に横たわる悪いイメージの記事は「適していない」ということなのだろう。とはいえ、繰り返すが不採用なら「不採用」だと言って欲しかった。わたしのこれまでの投稿原稿で、唯一の「不採用原稿」だった。またいつか、その不採用原稿を、ここに載せようとは思うが、「覚えていたら」のことである。