箕輪町長岡長松寺 延命地蔵尊
8月26日の民俗の会見学会で訪れた箕輪町長岡の長松寺は、曹洞宗の寺で創建は明応元年(1492)と伝えられている。境内に入って左手本堂前に、覆屋根の下に守屋貞治作の延命地蔵尊が座している。女性的な温和な顔立ちの地蔵尊で、明確に守屋貞治の作と判明している石仏である。それは「地蔵尊建立諸入用」という書付が残されているからだ。それによると、貞治と弟子の渋谷藤兵衛によって彫られたもので、文政10年(1827)に造立されている。その書付の表紙には
文政十丁亥年十一月
地蔵建立諸入用控帳
世話人 与一 善五衛門
と記されている。造立の経過が記されており、同年8月4日に藤兵衛一人が出て村の世話人等と作業の打合せや石の詮議をしている。以後8月11日から作業をしており、藤兵衛は村人足の石堀及び石出しの指導に当っている。9月5日からは貞治の作業が始まる。この二人の作業を地元の石屋7人、及び村中の人足が協同し11月10日に竣工した。時に貞治63歳、藤兵衛44歳であった。
「地蔵尊建立諸入用」とは別に「地蔵雑用控簿」というものも残されていて、その表紙には
文政十亥年
地蔵雑用控簿
世話入 善五衛門
与市
とある。これら詳細については、『石仏師 守屋貞治』(昭和52年 高遠町誌編纂委員会)に記録されている。こうした造立に当っての詳細が記録されている資料が残されているのは、貞治仏の造立経過がわかる貴重なものである。
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