長野県民俗の会第228回例会が伊那市で行わたことは「盃状穴 前編」で述べたとおり。今回はメインはザザ虫漁見学であったが、ザザ虫漁見学のあとの自然石道祖神や篶竹細工見学も、企画した本人が言うのもいけないが、内容豊富な例会だったと思う。ザザ虫漁については、平成25年に行った185回例会において牧田豊さんにお願いし、「どうして、ざざ虫は伊那にしかないのか」という話をしていただいている。漁期に例会がマッチすることがなかなかない中で、ようやく実際のザザ虫漁を見学してもらったというわけだ。そしてそもそもザザ虫漁見学を企画することになったきっかけは、総会において「ザザ虫を食べたい」という意見があったからだったが、その意見を発した方は今例会に参加されなかった。
2018年に「ザザムシ漁の今」を記した。その際にもお願いした中村さんに、今回の例会でもお世話になった。伊那市内でザザ虫漁といえば中村さんしか浮かばない。中村さんは県の地域振興局の依頼でコロナ禍以前は度々実演などされていた。メディアへも度々登場されている。過去のザザ虫漁と現在のザザ虫漁、その漁獲量に対する数値は、「語りつぐ天竜川」の49巻、牧田豊さんの『伊那の冬の風物詩 ざざ虫』が詳しい。ただし近年のデータではない。天竜川漁協にそのことを問合せたが、冷たく「ない」と言われてしまった。実態としては絶滅的な状況なのだろうが、噂によると、今年の「虫踏許可証」取得者には漁協の役員さんがおられるようで、少し漁協でも危機感をもたれているよう。
三峰川では山室川支流の栗ノ木立川の上流で斜面崩落が昨年あって、いまだに白濁した水が流下している。そのせいで三峰川合流点より下流ではザザ虫漁はダメだと中村さんもいう。鮎漁も同様だとも。川の環境は昔に比べるとだいぶ変わっている。もちろん治水対策によるものだから致し方ないだろうが、「ザザムシ漁の今」でも記したが、U字溝化した河川では、そもそもザザ虫漁をする浅瀬がなくなりつつある。
中村さん本人が料理されるというザザ虫を漁場で試食した。事前に中村さん宅を訪ね打合せをした際に、奥様もご一緒されていたが、奥様はザザ虫を手に取るのも苦手らしく、もちろん料理することもない。中村さんはあっさりした煮方をされ、世間で出回っているザザ虫に比較すると甘くなく、ザザ虫本来の味を大事にされている。ザザ虫が苦手という人にはさらに苦手さが膨らみそうだが、ちゃんとマゴタとアオムシの違いがわかる。試食も、そして漁体験もさせていただき、貴重な体験ができた例会であった。
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