続々「犬神」中編より
今回3回にわたり「犬神」に触れているが、『飯島町の石造文化財』(2006年 飯島町教育委員会)に記載されているすべての犬神を確認していないので、今後も確認された時点で続編として日記に記録していくつもりである。とりあえず今回の記事最終回にあたる事例について見てみよう。
飯島町飯島石曽根諏訪神社境内
飯島町田切中平観音堂前墓地
安曇野市明科龍門寺
写真1枚目は、飯島町石曽根にある諏訪神社境内にある「犬神位」である。これまで「犬神」例が多かったわけであるが、そこに「位」が加えられている。同じ場所にはほかに5基の石神が祀られており、ほぼ同時期に建てられたものと思われるが、並んでいる「犬神位」は、ほかの石神が丸く角のない石に文字が刻まれていることを思うと、自然石のままの形であり、年代はもちろんだが、建立者も異なる印象がある。いずれの石神にも銘文はない。
写真2枚目は、田切中平の観音堂向いにある墓地の脇に建つもので、「白犬㚑 十三年 下平氏」と刻まれていて、他のものと雰囲気が異なる。「㚑」はたましいを意味しており、白犬の霊を弔ったものと考えられる。したがって「十三年」とは犬の歳だろうか。墓地の脇にあることからも、明確に飼い犬の霊を弔ったものとわかる。
同様に犬の霊を弔ったものとして、先日安曇野市明科の龍門寺を訪れた際に見たものが3枚目の写真である。前面に「犬霊供養塔」とうり、背面に「番犬名」とあり、さらに「昭和十年十二月建之」と建立年が刻まれている。年銘らしきものがほかにも刻まれていてそれらの日が何を意図しているか、探る時間はなかったが、「通称」と刻み犬の名も刻まれている。
飯島町で多く見られる「犬神」とは少し雰囲気の違う例を今回取り上げてみたが、こうした犬の霊を弔う意図が明確なものは、ほかにも事例はあるのだろう。ちなみに『駒ヶ根市の石造文化財』(駒ヶ根市立博物館 平成9年)の一覧には1基だけ「犬神」が記載されている。「亥女」とあることからこれも飼い犬の供養のために建てられたものかもしれない。駒ヶ根市では以前「犬塔」をここで紹介している。
終わり