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多生の縁 ~ どぶとの一期一会

2014-10-21 | 百日草(別れた友への思い)
つんちゃがどぶに会ったのは3年前のちょうど同じ10月だった。

トンポッチおばちゃん家に在籍するデグーである。
本名はクリなのだが、
その容貌からどぶねずみを連想させるので、
通称:どぶ。


トンポッチ家に来た当初、かなりのやんちゃ娘で、
動物の扱いに不思議な才を持つフミ姉ですら
噛まれたことがあったが、
さすがにフミ姉マジックで見事に飼いならし、
その後5匹に増えた同居デグーの中でも
トンポッチおばちゃん一番のお気に入りの愛鼠となった。

お笑い系・庶民派キャラの親しみやすさは、
トンポッチおばちゃんの琴線に触れる可愛さだったようで、
容姿端麗な他のデグーよりも贔屓されていたようだ。

5~6年と言われる寿命をはるかに超え、
8歳になったどぶは、さすがに衰えをみせはじめ、
体の中に空洞ができたのかと思うほどに
手のひらに乗せると軽く感じるようになっていたという。

今までは、
「デグーは糖尿病を罹患する危険性が高いから、おやつはあげないで!」
とフミ姉に厳命されていたけれど、
それも、あといくばくかの余命を思えば、解除されてもいい。
食いしん坊のどぶにヨロコビを与えてやりたい、
というトンポッチおばちゃんの当然と思える判断によって、
どぶは旅立ちの前日まで、大好物のかぼちゃを食べた。

小さな体は痛々しいほどに変容し、見ていられないほどだったというが、
「ごはんだよ~」と声をかけると懸命に食べ物へ向かった。

危篤状態になって、もう虫の息であったにも関わらず、
フミ姉の帰りを待ち、フミ姉の手の中で安らかに旅立った。

「あんな小さな動物だけど、大好きな人を待っていたんだよねー」
と、電話口でトンポッチおばちゃんはしんみりとしていた。

仏教の世界では、輪廻転生ということが信じられている。
多生とは何度でも生まれ変わるということだそうだから、
その繰り返しのうちに、縁がつながっているもの同士は
いずれ出逢うことがあるのだろう。
そう信じれば、悲しみも和らぐ。

再会は現世ではないかもしれないけれど、
そしてどういう姿かはわからないけれど、
再び会うという希望が、失った悲しみにたえるための力を与えてくれる。


一期一会であっても、縁があったのだから、
つんちゃもどぶと再会するかもしれないね。

つん:こいつと?


つん:この姿、覚えとこ・・・。


どぶ:いやぁ~、高貴な生まれですから、お互い生まれ変わっても、上品にお会いしましょー。





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