今日の「 お気に入り 」 。
「 今日のをはりのうつくしや落日
うらうらほろほろ花がちる
無縁墓碑整理さる
てふてふひらひらひらかうとしてゐる春蘭
名もない草のいちはやく咲いてむらさき
降つたり霽れたりおのれにかへる
ともかく昼寝の枕一つもつ
ずんぶり温泉 ( ュ)のなかの顔と顔笑ふ
述懐
この一すぢをみなかみへさかのぼりつつ
御飯のうまさほろほろこぼれ
夕焼雲のうつくしければ人の恋しき
禁酒したいが
蟬しぐれの 、飲むな飲むなと熊蝉さけぶ
濁れる水の流れつつ澄む
朝湯こんこんあふるるまんなかのわたくし
銭がない物がない歯がない一人
折りて仏にたてまつるお花もひがん
いつ死ぬる木の実は播いておく
もりもりもりあがる雲へ歩む
おもひでがそれからそれへ酒のこぼれて
生える草の枯れゆく草のとき移る
先夜今夜の犬猫事件に微苦笑しつゝ一句
秋の夜や犬から貰つたり猫に与へたり
焼かれる虫の香ひかんばしく
( 山頭火 )」
( 出典: 種田山頭火著 村上護 編 小崎侃・画 「 山頭火句集 」ちくま文庫 ㈱筑摩書房 刊 )
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