「今日の小さなお気に入り」 - My favourite little things

古今の書物から、心に適う言葉、文章を読み拾い、手帳代わりに、このページに書き写す。出る本は多いが、再読したいものは少い。

まつすぐに行かう  Long Good-bye 2021・10・18

2021-10-18 05:30:00 | Weblog








  今日の「 お気に入り 」 。


    「 月のぼりぬ夏草々の香を放つ

     吾妹子の肌なまめかしなつの蝶

     釣瓶漏りの音断続す夜ぞ長き

     独り飲みをれば夜風騒がしう家をめぐれり

     風は気まゝに海へ吹く夜半の一人かな

     風に吹かれて屋根の鴉は鳴きやまぬかな

     大蜘蛛しづかに網張れり朝焼の中

     闇をひたゝゝ押し寄する波のかぎりなし

     乞食ゆき巡査ゆき柳ちるなり

     あてもなく踏み歩く草はみな枯れたり

     鴉けふも啼きさわぎ雲のみだれけり

     光と影ともつれて蝶々死んでをり

     さゝやかな店をひらきぬ桐青し

     重荷おもくて唄うたふ

     ふるさとはからたちの実となつてゐる

     あめふるふるさとははだしであるく

     住みなれて茶の花のひらいては散る

     へうへうとして水を味ふ

     腹いつぱい水を飲んで来てから寝る

     岩かげまさしく水が湧いてゐる

     物おもふ一人なり木影うごかず

     雪をよろこぶ児らにふる雪うつくしき

     水底いちにち光るものありて暮れけり

     一葉落つればまた一葉落つ地のしづか

     月澄むほどにわれとわが影踏みしめる   

                    ( 山頭火 )」


    ( 出典: 種田山頭火著 村上護 編 小崎侃・画 「 山頭火句集 」ちくま文庫 ㈱筑摩書房 刊 )




                      
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