V=4/3πr³

詩と物語を紡ぎます

雪の果て ――花さんぽⅲ

2020-03-30 23:00:00 | poem
昨日から風が止まない。

吹き付け、吹き返し、
吹き上がり、吹き下ろし、
挙句、
渦を巻いて、
壁を、叩き付けられる。

その繰り返しで、
風は止まずに、

気付いたら、
風向きだけが変わっている。

薄墨と
濃墨と
濃淡は乱れ
溶け替わり混じり変わり
ひとときもとどまらない
雲の墨流しに
予想よりだいぶ早く
小雨が落ち始めた

この雨はやがて雪になる
風向き通り空気が冷えて
大粒の雪が辺りを染める 

群生する仲間と、寄り添って
群生する仲間に寄り合って
乗り越えるんだ、乗り越える

ひとりぽっち、
じゃあないよ、
わたしのあとに、
みんな、咲くよ、
なにがあっても。

雪 雪 雪 雪 雪
ゆき ゆき ゆき ゆき ゆき

あめ ゆき あめ ゆき あめ
雨 雪 雨 雪 雨


雨が、霙めいて、雪になって、
雪に、雨が混じったら、雨に、
溶けた。
そして一歩、
もう一歩だけ、
春が、すすむ、よ。




written & photographed
2020/03/28,29
impvobed
2020/03/30

虹色日輪 ――花さんぽⅱ

2020-03-25 23:30:00 | poem
1.stained glass


それは

桜花冷えの硬質な空に
一際映える、
のです


江戸桜、でなければ
なりません

満開、を迎えたら
猶予
はありません


はらはらと
花弁が降り始めの午、が好い

ほろほろと
宴の酒にほろ酔えば、尚の事


大の字に
天を仰げばわかります

きっと
世界が変わります


裏切られ、恋破れ、
愛は死に、
哀しみの……

ただ哀しみ、
一色の、

『蒼い』
空に


分光魔術の
fractal stained glass


淡い
桜花色硝子の向こうに
―― 哀しみの ――
空は続きますが、


慰め、にはなりましょう?







2.虹色日輪


北南
北南北
南北
春訪ひに
日和見の風


きたみなみ
きたみなみきた
みなみきた
はるおとなひに
ひよりみのかぜ



北西風を
喘ぎて渡る
我が背に
光子光波の
打ち寄する午後


ふゆかぜを
あへぎてわたる
われがせに
くわうしくわうはの
うちよするごご




一輪の桜花
一片の雲
に、
光密度極みし
虹色日輪


いちりんのはな
ひとひらのくも
に、かぜ
ひかりきわみし
にじのにちりん





notes
1. stained glass/ルビ一覧
✻桜花冷え:はなびえ✻
✻花弁:はなびら✻
✻午:ひる✻
✻分光魔術:スペクトルマジック✻
✻桜花色硝子:はないろがらす✻


written
2020/03/24,25
photographed
2020/03/24


祈り

2020-03-11 23:00:00 | poem



 夜明け前
 雲間を 割り裂いて
 守りの星は 眩く現れ
 全き輝きを 宇宙に
 解き放った

 夜明け前
 その白い光を 浴びて
 私もまた ま白になり
 白く祈りを 繰り返し
 解き放つ

 この惑星の地上に 解き放ち
 この惑星の海上に 解き放ち
 この惑星の生命に 解き放ち

 ま白に ま白に
 光 あらん ことを
 祈る



written
2020/03/11

notes
*宇宙:そら
*惑星:ほし

2458909.49999

2020-03-02 02:00:00 | poem
   創作ノートより

 四年に一度
 地球上に出現する
 二月二十九日とは
 三次元には完璧など無く
 自分自身と世界中の
 混沌と不完全を受け入れて
 初めて生きていける
 極めてhardな時空なのだと
 語っているのかもしれない


   metaphor

 名画座で観る旧い仏蘭西映画
 と
 老夫婦の営む純喫茶で飲む珈琲
 と
 マルシェでまとめ買いした菜葉菜
 と
 フィボナッチ数列に関する薀蓄と冗句

 と

 (あめ?)

 雨の音に気付いた時

 早春の一日の終わりに
 啜り泣くような雨音は
 切なくて寂しいと

 閏年を巡る比喩と集中の糸は
 切れた



written
2020/02/28,29
improved
2020/02/29,03/01,02

note
*2458909.49999
ユリウス通日。西暦では、"2020年2月29日23時59分59秒"

perfume

2020-02-26 22:00:00 | poem
 空は
 際どい温もりで
 気怠く雲に覆われ

 春の
 もう一つの顔を
 見せ付けてやまない



 乙女心は
 時に気紛れ
 時に頑な

 ………だけど

 ennuiという名の
 perfumeはまだ
 わたしには着こなせない



 だから今夜
 あの淡い香りは
 その小瓶ごと

 そうよ今夜
 この花の下から
 雨に流すわ



written
20/02/26