tsurugiのブログ

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狂気は汎く

2019-09-13 23:57:00 | 日記
いい感じに薄暗い
居酒屋の座敷の一席で
一人が手洗いのため席を立った

ゴンッ
という鈍い音とほぼ同時に
「イテッ」
という声が上がり
一瞬の間をおいて
一席は笑い声に包まれた

席を立った男は
天井から吊るされた
低めの位置にある照明器具に
その頭をぶつけてしまった
ようだ

一同の笑い声がやみ
一瞬の注目から
照れ隠ししながら
逃れていこうとする
男の背にむけて
こんな一言が発せられた

「そんなとこにある照明に
頭をぶつけるのは、きみが
そんなにも巨体だからにちがいない」

声は続く、

「きみなそんなにも巨体なのだから
これからもそうやって
あらゆる場所の照明に頭をこづけるに
きまっている」

そして最後に、

「さあ、きみがもう二度と
頭をぶつけないようにその巨体を
切断して問題のないおおきさにしてあげよう」

声の主はそう言うと大鉈を振るって
男に襲いかかった

、、、

この寓話はなにを意味するか

もちろん、ここに登場する
男は巨体の持ち主などではなく
たまたま、不注意により
照明器具にあたまをぶつけた

つまり照明器具は
ちょっとした注意を向ければ
回避できる位置にあった

いいかえれば、
その注意を怠れば
誰もがあたまをこづけて
しまいかねない場所にその照明はあった

しかし声の主は
男を条件に限らず何時たりとも
必ず、絶対的に、照明に頭を
ぶつけうる存在と解釈した

その誤った認識により
男は巨体の持ち主であると
事後的に決定付けられてしまった

、、、

犯罪に手を染めるもの
狂気を起こすものもまた
事後的に
絶対的にそうありうるものとして
想定される

心の闇、狂気の沙汰の
存在が後付けされる

彼らの過去は、狂人の文脈に
再解釈されて行く

そしてそんな異常の持ち主である
彼らは矯正の対象者となる

このロジックによる
リスクは何か

狂気を特殊化、例外化してしまうこと
は、それらを他人事にしてしまい
油断を生む

また、曲がっていないものを矯めようと
することで、
かえって別の歪みが生じてしまう

あるいは、曲がっていて然るべき
ものを無理に矯めることによって
社会不適応な木偶の坊をうみだすことになる

つまり、
絶対的な犯罪因子×矯正
という演繹は
そもそもの第一前提にに誤りが
あるために論理的には正しくとも
事実としては正しくない

犯罪矯正というコンセプトには
根本的な誤りがあり、それゆえ
犯罪者の再犯を防ぐことも
社会の犯罪抑止に貢献することも
ありえない


これが狂気をたまたま起こし
矯正により狂気を事後的に植え付け
られた、そしてその姿をいくつも
目の当たりにしてきた当事者の
実感だ

こんなことは
決して語られてはならない




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