2007 No.4 1/19-1/20
作者:有吉佐和子(新潮文庫)
評価・・・★★★★★ 5.0
世界で初めて全身麻酔による外科手術に成功した江戸時代後期の医師・華岡青洲(はなおかせいしゅう)。
その彼を献身的に支えた妻と母の壮絶な女の戦いを描いた作品。
う~ん、女はいつの時代もタイヘンです。
今から10年くらい前にも一度読んでいるのですが、今回も非常におもしろく読めました!
以前にNHKでドラマ化されているので、今回は頭の中ではそのときの役柄(青洲=谷原章介さん、青洲の妻・加恵=和久井映見さん、青洲の母・於継おつぎ=田中好子さん)でイメージしながら読んでました。
武士相当の身分を許されたほどの大庄屋の家に生まれた加恵は、姑となる於継に見込まれて、医家とはいえ格下と言ってもいい華岡家へ嫁ぎます。
ときに夫となる雲平(青洲の若い頃の通り名)は医学をさらに極めんがため京へ遊学中。
けれども加恵は、子供の頃からの憧れの存在で、美人で賢いと有名な於継に見込まれたことがうれしく、夫の顔も知らないまま、優しく美しい姑のそばで暮らせることを幸せに感じていました。
嫁いでから3年後、ついに雲平が京から帰ってきますが、その日を境に於継の態度は豹変します。
あんなに於継を慕っていた加恵も、於継の真意に気づいてからは尊敬が憎しみに変わります。
そして、2人の間には静かなれども壮絶な女の戦いがスタート!
この2人のバトルが怖ろしいこと!!!
はた目にはお互いをいたわりあう美しき嫁姑関係と見せながら、その底ではお互いに雲平を取り合うように張り合う二人。
やがてそのバトルは、雲平の麻酔開発研究の実験台になろうとするまでに発展します。
3人の微妙な関係を見事に描いていて、本当に素晴らしい作品です。
嫁姑の戦いもすごいですが、江戸時代に青洲のようなこんなに優れた人物が和歌山の片田舎にいたということにも是非注目したい作品です。
和歌山県紀の川市の旧・那賀町が華岡青洲の出身地です。
現在は、生家跡周辺地区は整備され、青洲の屋敷を復元した春林軒や、記念館、フラワー園などがあり、一帯は青洲の里と呼ばれて観光スポットになっています。