年寄りの漬物歴史散歩

 東京つけもの史 政治経済に翻弄される
漬物という食品につながるエピソ-ド

天保図録 松本清張著

2011年06月03日 | 築地市場にて
天保図録 松本清張著
天保の改革を扱った松本清張の『天保図録』は3ヵ年かけて週刊誌に連載された小説である。この長い小説の中で印旛沼工事は最後のほうに出てくるのだが目付として派遣された戸田氏栄はほんの少ししか出てこない。
 あとがきで松本清張氏が語るには『天保の改革』は政治・経済・社会・風俗・土木・刑罰と色々な立場から見ることができる。幕府の権威が失墜し、財政状況が厳しい中、幕府草創期の状態に戻すべき方針を立て、強引に改革を推し進めたが諸政策が失敗に終わり、かえって幕府衰退を促進した。そこにアヘン戦争で中国がイギリスに敗退したことが伝わり、鎖国方針を変えないで国防をするという方策しかなかった。印旛沼工事も江戸湾口を異国船に封鎖された時、利根川経由で物資を運ぶことで江戸の消費経済がマヒすることを避ける目的があった。
 また清張に言わせると官僚主義者水野忠邦を利用した鳥居耀蔵の活躍が目立った改革だったとも言える。この鳥居の活躍が幕末期の秘密警察制度を異常に発達させたという。安政の大獄も明治の福島事件捜査でもこの手の警察が活躍していた。また水野は経済には疎く、株仲間解散によってかえって物価が高騰した。ペリー来航直前の浦賀の塩問屋の混乱もこの改革の残像である。
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