色刷り明治東京名所絵 井上安治著 木下龍也
井上安治の画題は大川(隅田川)及びこれに繋がる枝川や運河が多い。江戸明治前期はまだ水運が交通物流網の中心で東京下町の生活者の大半は川に関わる仕事に従事していた。安治の師である小林清親も大川の傍で生まれ育った。師の影響もあり、川と水が季節や気候の微妙な光の変化を安治が描いていたという。(木下龍也)
明治5年に鉄道開業から次第に鉄道網が整備され、次第に内陸水運が衰え始めた。江戸ではない明治東京の初期が安治の版画に現れているという。江戸は水運、明治は鉄道から陸運。安治と小林清親の明治10年代は過渡期であった言える。