「大家さんと僕」と僕 矢部太郎 著 新潮社
図書館で予約して借りて読んだ本でした。大家さんと矢部さんの温かくてほっこりした4コマ漫画が大ヒットして、その後の矢部さんのエピソードやこぼれ話、矢部さんがこの本を出版したことで世話になられた方々や芸人仲間などの親交がある方々のコメントなどが掲載されているエッセイ風の本でした。「大家さんと僕」の本ができるまでの話や手塚治虫文化賞を獲られたときの話など、大家さんとの出会いがなければ「大家さんと僕」の本は、この世に存在しなかったかもしれないのですが、誰も傷つけないよう優しさが溢れる作者の描き方は、作者の観察力や表現力が抜群の素晴らしい才能の持ち主であったからこそ、また、作者の多くの人々に愛される人柄があってこそ、多くの人々の心を打つことができた作品になったことがよく伝わるような内容の本でした。お父さんが絵本作家のやべみつのりさんだったこともこの本を読んで初めて知りました。この本では、今田耕司さんや博多大吉さんや山田ルイ53世さんなどと矢部さんのご関係を描いた4コマ漫画や大家さんと矢部さんの番外編の4コマ漫画も掲載されていて、読んでいるとほっこりするような箇所もたくさんありました。大家さんの赤いスーツケースの4コマ漫画の話もとても印象に残りました。スーツケースは衣服を入れておられるそうですが、私もスーツケースに衣服を入れて保管していたので、なんとなく親近感が涌きましたよ。糸井重里さんが大家さんと矢部さんのご関係を綴っておられたエッセイがお二人の本当のご関係を上手に表現されていて思わずそうだなあと頷いてしまいました。「心が通じ合っていたし、お互いをとても大切に思っておられたこと、いっしょに成長していこうという気持ちがあった、共にいる時間がとても嬉しかった」というご関係と糸井さんは表現されていました。そういう関係ってなんとなくですが、お互いを十分分かり合っているということになり、いいなあと思いました。週刊新潮で連載されていたのをまとめた第2作目が発売されたそうで、最後のほうの4コマ漫画で、矢部さんが大家さんと出会われて、「幸せの本当の意味を知りました」と書かれていました。大家さんは亡くなられたそうですが、矢部さんの作品の中でいつまでも生き続けて行かれると思うと大家さんにとっても矢部さんとの出会いでそれまでとは違った永遠に続いていくような幸せをきっと感じておられたのではないのだろうかと想像しながら読み終えました。