TULIP DIARY

届くといいな やさしい風に乗って

ステップ

2021年05月20日 | 映画鑑賞日記

レンタル店で借りて観た映画『ステップ』の感想です。2歳半の娘を遺して30歳の若さで奥さんが亡くなった主人公の健一(山田孝之さん)が、遺された娘美紀を保育園から小学を卒業するまでの10年間、男手ひとつで仕事と育児を懸命に行いながら周りの優しい人々に支えられて愛娘と二人でゆっくり歩んで行った10年間の物語です。重松清氏原作の映画化作品です。

美紀が通う小学校の授業で、家族の話について発表するシーンで、美紀が、「お母さんが家にいます。」と語っていたシーンが特に心に残りました。そのときのことを担任の先生は美紀が嘘を発表していたと父の健一に話していたシーンがありました。このシーンを観ていて、美紀のお母さんは亡くなったのだけれど、「家にいる。」と話した美紀の気持ちがすごくよく分かりました。ご飯を作ってくれたり、話を聞いてくれたりする生きている母親の姿は美紀の家では見ることがもうないのだけれど、美紀にとったらお母さんが「いつも家にいる。」のですよね。父の健一も美紀が「家にいる。」と語っていたことが確かに嘘を話したわけではないとちゃんと理解していて、さすがと思いました。この映画の中では、「いなくてもいた大切な人」をいつも覚えているという気持ちも静かに寄り添うように描かれていて好感が持てました。それぞれの人の立場に立って、押し付けでない優しさと温かさがこの映画では丁寧に描かれていました。京王線に掛かる橋の上を親子二人が渡るシーンが時が流れるごとに描かれていました。ゆっくりと二人で育んできたいろいろな情景がほんわりと滲み出ているような描かれ方は特によかったと思います。亡くなった奥さんと健一が仏壇の前で話をしていたシーンもよかったです。見終えるとほっこりした気分になれた映画でした。

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