先日見に行ってきた映画『こんにちは、母さん』を映画館で鑑賞していて、印象に残ったことがいくつかありました。
一つ目は映画の中で流れていた息子の昭夫が好きだったと言っていたサザンオールスターズの『涙のキッス』とカセットデッキでした。サザンオールスターズのライブに行ってきたよと年賀状に何回か書かれていた一番最初にいた職場の先輩は自分よりも17歳ほど年上の方ですが、お元気でお過ごしになられているのかなとこの映画を見ていて思いました。一番最初にいた職場では阪神ファンの先輩の方々がたくさんおられました。阪神が久々に優勝した年なので先輩の方々はさぞ喜んでおられるのだろうなあと思ったり一番最初にいた職場のことを思い出しながら見ました。昔よく流行っていた赤色のカセットデッキも懐かしかったです。
二つ目は昭夫の仕事に対する向き合い方でした。昭夫は大手の企業の人事部長で、毎日、その会社で肩たたきをする中間管理職のような立場でした。地位や給料などは優遇されている立場にあっても、その仕事に嫌気が差していたようで同じ企業に勤める大学時代からの友人がリストラされようとしていたために尽力し続けていましたが、最後には自らの地位や仕事を投げ売って友人の次の就職先を見つけてあげるという昭夫の姿が描かれていました。だいぶん前に大手の企業に勤めていた方が退職されて救急車の運転の仕事をされていたのを聞いたことがあったので、昭夫と同じような立場だったのかもしれないなあと思いました。自分自身は大企業ではない職場で働いていたので、まだゆるい職場環境だったから何十年も働くことができたかもしれないなあと思いました。昭夫のようながんじがらめ状態の状況の仕事だったら自分だったら昭夫のように根気よく働かずすぐに辞めてたかもしれないと思いました。
三つ目は福江の家があった下町の風景でした。映画の中で出てきた下町はまさしく昭和を思い出すような懐かしい風景でした。豆腐屋さんがラッパを吹きながら街中で豆腐を売り歩くシーンが出てきましたが、今でもこういう情景が下町には残っているのだなあと思いました。昔子供の頃、大阪市内の家の近所でも豆腐屋さんや金魚やさんや竿竹を売り歩いておられたのをよく見掛けたのですが、その姿を見ることは今はもうありません。この風景は懐かしいだけではなくその時代が今よりももっと温かいものが多かったような気がしました。携帯やインターネットや大型スーパーなどの便利そうなものがなかった時代なのですが、その当時の風景が今も残っており現代と繋がっている下町はいいなあと思いました。福江が暮らす家の中に縁側があったり、庭があったり、赤べこやこけしが棚の中にたくさん並べられていたり今の現代ドラマなどでは絶対出て来ないような家の中のいろいろなものたちの存在は懐かしいだけでなく忘れてはいけないような思いに気が付くような風景でした。
四つ目は福江が恋していた牧師が北海道に行ってしまい、その失恋が描かれていたシーンでした。北海道に一緒に行きたいと懇願した福江でしたが、結局一人で北海道に旅立った牧師との恋愛関係が切なく描かれていました。歳に関係なく恋愛関係は紡げるときもあったりするものなのでしょうけれど、その淡い関係に生きる勇気をもらっていた福江の心の中がよく伝わってきました。人はちょっとしたことが嬉しかったり、ちょっとした温かい思いを受け取った記憶が生きる力になっていることも多々あるということなのだろうと思いました。
五つ目は最後のシーンで福江の家の庭から上のほうだけ見える花火の情景です。我が家でも昔は大阪城越しに天神祭りのときに打ち上がる花火が見えていた時期がありました。家族皆で上のほうだけ見えていた花火をよく眺めたものです。息子の昭夫と二人でこの花火を眺めていたシーンは福江と昭夫の昔の思い出と今後の生き方を明るく照らしていたかのようなシーンでした。
最後に映画の中で流れていた涙のキッスの動画を貼り付けてみました。
涙のキッス(サザンオールスターズ) - 桑田 佳祐 -