50のひとり言~「りぷる」から~

言葉の刺激が欲しい方へ。亡き父が書きためた「りぷる」(さざ波)を中心に公開します。きっと日常とは違った世界へ。

「敏彦じゃないのかね・・・・・・

2016-01-27 19:35:00 | 小説
「敏彦じゃないのかね・・・・・・そうですか。『地球の落とし穴』では端役だが、重要な役回りでね。あなたに頼まれたから今の時期に、否まあそれはいいでしょう。要は当人の自覚」

(「おしのび」つづく)

「連絡の時刻。仕様がないわ」

2016-01-26 20:44:59 | 小説
「連絡の時刻。仕様がないわ」
と自分に言い訊かせた。敏彦が起きていくべきところ、理恵は物音を立てない気づかいをしながら、頭の冴えた愉快な心持ちが嬉しいのだ。あの世界からの呼びだし音に向かって、理恵はふるさとで結ばれた敏彦に対するいとおしさを抱きながらいた。

(「おしのび」つづく)

その疚しさはふるさとの人、幸男へのそれだったが、・・・

2016-01-25 19:54:05 | 小説
その疚しさはふるさとの人、幸男へのそれだったが、隣室のベルの執拗さに敗けて起きあがる。ベッドのゆれが若い男の肉体に伝えられることなく、隣のベッドに添ってベッドルームをでていく。

(「おしのび」つづく)

岬ホテルのベッドルームで理恵は、電話の・・・

2016-01-24 16:14:46 | 小説
岬ホテルのベッドルームで理恵は、電話のベルを夢見心地で聞いている。目が覚めるとカーテンの間隙を縫い、真昼間の光が朗らかにきている。電話のベルに、敏彦が快かいな寝返りを打っている時、理恵はふとふるさとへの疚しさに打ち勝てる自分を感じる。

(「おしのび」つづく)

幸男はそうして、パチンコが一向に楽しめなかった。

2016-01-23 20:22:45 | 小説
幸男はそうして、パチンコが一向に楽しめなかった。またいつにない大勝を、閻魔庁から逃げ帰る男のような気分で店をでる気持ちが悪いものだった。歩道に小雨の染みを見つめて帰る真昼時で、理恵のおしのび旅行一週間分の悩みを背負いながら、とぼとぼ帰っていっている。

(「おしのび」つづく)