エッセイ 課題 【あれから一年・東日本大震災】
あれから、一年
「もう一年なんですね」、「あれから一年たったよ」、こんな言葉があちこちで聞か
れる。
東日本大震災から一年たったが、テレビや新聞の報道は、目にする度に心が凍
りつく。
災害に遭われた人をどう支えたらいいのか、自分が試されているような気持ちが、
今も、いつもしている。
離れたところに住んで、体力もない私は、現地に行ってボランティアをと言っても
邪魔なだけだろう。
出来ることは少しの募金と、復興にかかる税金を、どうぞお使い下さいと、政治家
の背中を押すことぐらいしかできない。
災害の跡、大きな病院や公共施設と思われる鉄筋の建物は残っていた。
あれがもう少し高かったら、随分変わっていただろうと残念で仕方がない。
「津波が来たら高いところに」、誰でも知っている。
それを考える時、津波で周りが水浸しになっても、救援活動ができる広い屋上を
もつ、公団の建物のようなものを沢山造ったらどうだろうか。
地震も津波も突然来る。地震に壊れにくい頑丈な建物、大きな津波からでも身を
守れる高い建物、不意を突かれても、すぐに逃げ込めるところを、早急にはじめて
ほしい。
テレビで男性が話していた。
あの時、津波が来ると聞いたので、2階に上がった。
外を見ると、濁流が窓近くに来たので、お父さんを3階に引っ張り上げる間もなく、
2階に水があふれた。そして3階にも水が上がってくる。
窓から表を見ると、真っ黒な渦が凄い勢いで近づいてきた。
「あ~もう駄目だ」と、観念したという。
だが、突然水の向きが変わり、引いていった。
道路を水路にしていた流れが、交差点のまわりで急に変化したのが幸いしたの
だろうと、その模様を話し、最後に、「まるで、魂が抜かれるようだった」と言った。
人間、そんな思いは一生のうちに何度もあるものではない。その言葉が、私は忘
れられない。