エッセイ トトロの森
「トトロの森を歩こう」というサークルに入っている。
市の公民館で狭山丘陵の遺跡や、生きもの、自然などの講座を受け、その後、有志10人ほどで自主サークルを立ち上げた。当時、狭山丘陵がモデルと言われた映画「となりのトトロ」がブームで、何かよく分からないトトロを探すというか、自然を感じに行くとか、そんな目的で里山を歩く会になった。
トトロの森とは、1990年代、宅地開発等から狭山丘陵の自然を守ろうと、市民団体が立ち上がり寄付金を募り、土地を買い取って、今、トトロの森20号地まである。
会は、トトロ財団発行のガイドブックに添って、月に1度出かける。計画や連絡、会計等を古い会員が受け持つ。古い会員と言うと何か怖そうだが、決して押しつけなどはしない。ただ一人の男性O氏は、半年分の予定表を作って案内してくれる。
晩秋の頃は、枯れ葉がすっかり落ちた静かな林、狭山湖の水源林金堀沢へ。藤の花のリクエストがあると、日の出町の大久野に、藤の花が自生しているから見に行きましょうと誘ってくれる、初夏の蛍も何度か見に行った。
「夏は海ね」そんな話が出ると、横須賀沖の無人島猿島や熱海の初島と、ガイドブックにない所を計画してくれる。大柄な体と自然体のO氏は、皆のお兄さん、若しかしたらトトロかもしれないと思っている。
会計のSさんは、若い頃、丸の内に勤めて、ご主人との職場結婚だったそうだが、その後の家庭生活も幸せそう、やさしい笑顔と柔らかな物腰はお手本だ。Sさんに限らず、私にはお手本にさせて貰っている人が何人かいる。
会は午前中に大体のコースを歩き、お昼になると木陰にシートを広げる。輪になっておにぎりを頬張るが、特に飾ることもなく手作りのおかずを交換し、そのレシピなどの話で盛り上がる。お互いを思いあう、細やかな品の良いサークルはまだまだ続く。
2013.8.9 課題 【あられもない・気高い】
十五夜さんのイラストより