エッセイ ソフトボール 課題 【スポーツ・芸術】 2010・7・23
夫の転勤で、広島市に引越しした。
市の中心から西へ、太田川の橋を渡ると古い町並みの巳斐がある。
立て込んだ住宅の側は急斜面の山で、見上げると、時々、トンビがゆうゆうと飛んでいる。
長男は4年生。
大きな小学校に転校したのでなじめるだろうかと心配だったが、直ぐに広島弁を使い始めた。
地方の良さなのだろう、周りのつながりが強く、町内対抗の競技がいろいろとある。
特に、子供のソフトボールは盛んで、決勝大会を広島市民球場で開催する、市子連と言う団体が力を入れていた。
長男もそこに入れてもらったが、その練習には親の出番が多い。
私も新参者なんて言っていられず、手伝いや応援に行っているうちに繋がってしまった。
小さな大会で勝ったといってはお疲れ会、負けたと言っては励まし会があり、親達が手つくりの料理を作る。
もう子供が卒業している人も、さっき釣ってきたから「食べんさい」と言って刺身等を差し入れてくれる。
ある夏の大会で、市民球場に出られることになった。
町内は盛り上がり、広場に練習を見に来る人が増えた。
フェンスの外から声がかかる。
エラーをした子に、パンチパーマの大人が、「なにしよるんじゃー」と大きな声をかけると、「おっちゃん黙ってて」と真っ黒に日に焼けた6年生がやり返す。
まだその日が来ないのに、親達も興奮している。
私も何か役に立つことがないかと考えた。
お願い、願い事、「そうだ、宮島に行こう」
誰にも相談しないで思い立った。
真夏の昼下がり、厳島神社は参拝客も少なく閑散としている。
ご祈祷をお願いすると、厳かな席に一人だけ案内されたので、何かとんでもないことをしているような気がした。
暗い神殿の中は海風が吹きぬけ、祝詞と、蝉の声しか聞こえない。
静かな時間が過ぎた。
きちんとお願いしたのだから大丈夫と、もう勝ったような気分で、必勝祈願のお札をしっかり抱いて帰ってきた。
つつじのつぶやき・・・連日のニュースで大雨の爪痕を報道している。
20年も前にお世話になった広島、幸い巳斐の方は大丈夫らしいので一安心。
「ソフトボール」は、今年もエッセイに書きました。
ギラギラした夏の青空を見てると心に浮かんでくる光景です。