エッセイ ワクチン 課題【偽もの・本もの】 2021.6.4
「しましょうか」。
先生に、初めて注射をしてもらう。
寒い日なのに半袖の診療服を着て、何となく、早口で話される。
「腕を」と言われ、採血の時のように腕の内側を出したら、「肘を曲げて、壁に向けて下さい」と言われた。
思い出した、注射は昔からこんな風にする、そして痛い。
だから注射は嫌いなのだ。
こちらの緊張が分かるから、先生も慎重にしているのかもしれない。
二か月に一度、近くの病院で血液検査をする。
中性脂肪の数値が基準値よりかなり高く、毎日一錠の薬を飲んでいる。
数値が下がる薬もあるが、副作用で痒みや発疹が出ることがある。
十年来お世話になっている先生には、随分苦痛を訴えた。
先生はその都度、違う薬や処方を変えて丁寧に応えてくれる。
いつもの診察日、インフルエンザのワクチンのことを聞いた。
コロナ禍の中、コロナかインフルエンザかどちらに感染したのか症状の見分けがつきにくいという。
インフルエンザだけでも予防しておきたいと思った。
兎に角コロナという強敵がいるのだ。
これは昨年秋の事、忘れていた。
今急がなければならないのは、本家のコロナワクチンの方だ。
私は受付日初日に申し込みをした。
接種は二週間後、集団接種会場は不便な所で、 雨でも降ったらタクシーになりそうだ。
取敢えず予約ができた。
その後に市役所から、かかりつけ医のリストが届いた。
近くにあるじゃないかと不満に思った。
友人は、かかりつけ医で、一週間後に接種が出来るという。
何か急いだ分、損をした気分だ。
皆がワクチンを打ち、普通の生活に戻り、
「お変わりありませんか?」
「お蔭さまで」、なんて先生との会話が早く戻りますよう。
先生の講評…いつも注射をするのは看護師なのだろう。珍しく自分で注射をする医師の表情がおもしろい。