先生の講評…後半「遠い日・・・」 の展開が鮮やか。時代相の違いがある。
エッセイ 赤い財布 課題【紙幣・硬貨・通帳】 2018.8.10
若い頃、革の財布を買おうとすると、黒か赤、茶色が基調だった。
男性は大体が黒、女性は、多少色の濃い薄いはあったが赤い財布が多かった。
少しお洒落な人が茶色を持っていたような気がする。
その頃、縦長の大きな財布が流行った。
お札は折らずに入れ、小銭入れはチャックの付いた別な所。
細かい仕切りにいろいろなカードを入れ、パンパンに膨らんだ財布を、友人たちは自慢げにバックから取り出した。
私は装飾品とかバックなどには無頓着だ。
未だにブランドのバックは持っていないが、ある時どう思ったのは、いい財布を買おうとした。
赤い財布は赤字になるから避けた方がいいと言われていたので、他の色を探した。
デパートを見たり普通の店を回ったりした。
何かに拘るとなかなか決められない。
しばらく経ってから買ったのは、緑色のエナメルに金の留め具の付いた、結構高い買い物だった。
自慢だった。
バックから出して金の留め具を外す時、指が少し気取った。
形が変わるのが嫌で、余分なカード等は入れず、領収書も貰わないようにした。
還暦の頃、何となく赤い財布を買った。
今度もエナネル、ワニ革のような型押しの派手なもの。
バックから出すとき少しワクワクした。
だが気がついた。
札入れの所がすぐに空っぽになり、ちっともお金が残らない。
赤い財布は赤字になると言われているが本当のようだ。
今はカードだけを入れ、引き出しの中で休ませている。
遠い日、姑は大きながま口を使っていた。
一緒に買い物に行くと、支払いの時、少し首をかしげて中指でぱちんと開ける。
硬貨だけではなく、四つ折りのお札が何枚も入っていた。
時々「帰りに口紅でも買いなさい」と、四つに折った一万円札をテッシュに包んで渡してくれた。
大きながま口もいいなと思っている。