つつじの書・・

霧島つつじが好きです。
のんびりと過ごしています。
日々の暮らしを、少しずつ書いています。

エッセイ 赤い財布

2022-03-05 15:33:11 | 楽しい仲間
                             

                            先生の講評…後半「遠い日・・・」 の展開が鮮やか。時代相の違いがある。


                      エッセイ 赤い財布  課題【紙幣・硬貨・通帳】 2018.8.10

            若い頃、革の財布を買おうとすると、黒か赤、茶色が基調だった。
            男性は大体が黒、女性は、多少色の濃い薄いはあったが赤い財布が多かった。
            少しお洒落な人が茶色を持っていたような気がする。

            その頃、縦長の大きな財布が流行った。
            お札は折らずに入れ、小銭入れはチャックの付いた別な所。
            細かい仕切りにいろいろなカードを入れ、パンパンに膨らんだ財布を、友人たちは自慢げにバックから取り出した。
            私は装飾品とかバックなどには無頓着だ。
            未だにブランドのバックは持っていないが、ある時どう思ったのは、いい財布を買おうとした。
            赤い財布は赤字になるから避けた方がいいと言われていたので、他の色を探した。
            デパートを見たり普通の店を回ったりした。
            何かに拘るとなかなか決められない。
            しばらく経ってから買ったのは、緑色のエナメルに金の留め具の付いた、結構高い買い物だった。
            自慢だった。
            バックから出して金の留め具を外す時、指が少し気取った。
            形が変わるのが嫌で、余分なカード等は入れず、領収書も貰わないようにした。

            還暦の頃、何となく赤い財布を買った。
            今度もエナネル、ワニ革のような型押しの派手なもの。
            バックから出すとき少しワクワクした。
            だが気がついた。
            札入れの所がすぐに空っぽになり、ちっともお金が残らない。
            赤い財布は赤字になると言われているが本当のようだ。
            今はカードだけを入れ、引き出しの中で休ませている。

            遠い日、姑は大きながま口を使っていた。
            一緒に買い物に行くと、支払いの時、少し首をかしげて中指でぱちんと開ける。
            硬貨だけではなく、四つ折りのお札が何枚も入っていた。
            時々「帰りに口紅でも買いなさい」と、四つに折った一万円札をテッシュに包んで渡してくれた。
            大きながま口もいいなと思っている。




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