つつじの書・・

霧島つつじが好きです。
のんびりと過ごしています。
日々の暮らしを、少しずつ書いています。

エッセイ 日曜日のテレビ 

2022-03-11 13:49:17 | 楽しい仲間




                                 先生の講評・・・① 良い出だしだ。地震の文字を使わずに地震が分かる。
                                           ② 日常と非日常の対比という点も。

                                  つつじのつぶやき・・・あの日と同じ金曜日ですね。駅ビルの9階、エッセイの授業がもうすぐ終わる時でした。
                                                その後、先生から「地震のことを残しましょう」と提案があり、3回作品を書きました。
                                                もう11年経つのですね。



                      エッセイ 日曜日のテレビ 【春・自由課題】2011.4.8 
   
               大変な事が起きているというのに、何時もの日曜日の朝だ。
               カーテンを開け、少しだけテレビを見てから、朝食の準備を始める。
               何十年もやってきたので何という事もないが、一人で用意をするのは少々くたびれてきた。
               夫は新聞を広げてはいるが、食事を待っているのが気配で分かる。
               手伝ってくれればいいのにと心で呟く。
               パンが焼けると、新聞を片手にいそいそと食卓につく。
               「新聞は向こうに置いて」と言うと、朝から不機嫌そうだねと目が言っている。

               私は、さっき見た地震と津波のニュースを早く見たいと、気持ちが騒いでいる。
               東北関東大地震という、未曾有の災害が起こったのだ。
               地震だけではなく、今までに経験したことのない大津波が襲った。
               そして、若しかしたらこれから一番厄介な事になるかもしれない原発の事故も起きた。

               夫はのんびりと、りんごを食べている。
               「ご馳走さま」、わざと大きな声で、カップを流しに持っていき、テレビの正面に座った。
               テレビの前のこたつ、夫はいつも正面に、私は横の席に座る。
               「あっ、俺の席を取ったな」と夫が言う。
               「主婦の座は空いているわよ」。
               席なんてどうでもいい。
               
               テレビのスイッチを入れた。
               何でもない日常、普通に暮らしていた町や車、畑が濁流にのみこまれて流されていく。
               素人の撮った映像に緊迫した息遣いが入る。
               津波の引いた後の無残な姿。
               大きな船が陸に乗り上げていて、いかに大きな津波だったかが分かる。
               瓦礫としか言いようの無いあの中に、行方不明の人が沢山いる。

               身震いしながらチャンネルを変える。
               自衛隊が、被災した人を救助している様子も伝えている。
               屋根や屋上に取り残された人を、ヘリコプターで吊り上げている。
               吊り上げられた人も恐い経験だろう。
               自然の災いだから誰が悪いのでもない、だがむご過ぎる。
               テレビの画面、息をつめて見入る。

コメント
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