エッセイ 霧島つつじ 【春・自由課題】 2009.4.10
母の実家は、村の真ん中の砂利道を曲って、山の方に少し上がっていくと、集落が六軒ほどの、一番奥にあった。
昔は大きな農家で、大家族が暮らしていたというが、私の生まれる前に、田畑も家も人手に渡り、屋敷跡には土台の石だけが残っていた。
広い屋敷跡には、葱や菜っ葉の野菜畑、大きな樹木、何かの花も咲いていた。
春になると、背戸のゴツゴツした岩肌に沢山のつつじが咲く。
そのはずれの小さな家に、祖母と、まだ結婚をしていない母の兄、叔父さんが住んでいた。
私は両親と、町中にある家に住んでいた。
叔父さんは町に出かけてくると、私の家に泊まった。
帰る時、幼い私を連れて帰り、しばらく祖母と三人で暮らした。
祖母は、子供を九人も生んだ。
母が末の子供だったので、私から見たら、随分年をとっていた。
優しいお祖母ちゃんと言うのではなかったが、寝る時はいつも一緒だった。
日向の匂いのする布団の中で、お伽話やわらべ歌を聞かせてもらった憶えがある。
叔父さんは、家に帰ると私には関心をみせず、祖母ともあまり話しをしなかった。
私は祖母の後を、一日中付いてまわった。
祖母の傍にいるのにも飽きると、裏山のつつじの木の下に行っておままごとをした。
種類などは分からなかったが、大きな樹の、真っ赤なつつじが大好きだった。
つつじの花と、春の青空を、うっとりと眺めてでもいたのだろうか。
七~八年前、春の風に吹かれて自転車をこいでいると、植木屋さんの畑に赤いつつじを見つけた。
懐かしくなって、植木屋さんに尋ねた。
「霧島つつじです」 幼い日の、あの時に、めぐり合ったと思った。
今、私の庭にも霧島つつじがある。
もうすぐ、真っ赤な花が咲く。
先生の講評・・・・・・・・表題の通りなら、初出はカラフルにするなど印象を強めたい。
のどかな人と風景がほうふつとする。
つつじのつぶやき・・・・・・・困ったコロナですね。
古い作品です。
今年もつつじは蕾を膨らませています。
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