エッセイ ルリ 課題【穏やか・乱れる】 2014・11・24
病院の帰り、電車の窓から新しい住宅の横の畑道を見て、不意に胸の奥がつまった。
冬の晴れた日、畑道を、長い毛を風になびかせて走るルリの姿を見た様な気がした。
10年以上前、家の建替えの為、その近くにアパートを借りた。
当時、シーズーの室内犬、ルリを飼っていた。
借りた部屋は、畑道に近い、古いアパートだった。
夫は単身赴任中、私は勤めていた。
建替え中は、息子たちの事、工事、銀行の事等一番忙しい時、気を張っていたが心に余裕がなかった。
そんな頃、ルリは変わった家のトイレの場所が分からなくなり、度々粗相をした。
ある時は随分我慢をしたのか、ぐるぐる回り始め布団の上に沢山のおしっこをした。
思い出すと本当に済まなかったと思うが、お尻をかなりきつく叩いた。
その感触は今も手に残っている。
最近、私は体調が良くない。
涙目になったり、頭痛がしたりするのは眼に原因があるのではと気になっていた。
4年程前、病院で診察を受けたことがある。
白内障は問題はないが、緑内障の疑いがある。
暫く様子を見ると言うのでそのまま過ごしてきた。
緑内障は怖い病気だと言う、不安な日が続いていた。
思い切って、病院に予約を入れた。
以前の担当医は変わっていた。
いくつかの検査をした後、新しい先生は「緑内障というのはどうしてかな」と首をかしげた。
白内障は視力の数値もしっかりしているし、手術はもう少し後、視力が下がってからでもいいと言う。
涙が出るのはドライアイの様なので、目薬を出しましょうという事だった。
かなり緊張しながら都心の病院まで出てきたが、不安は消えた。
ホッとした心の底にいたルリ。
畑道を見ておセンチになったのかもしれない。
また明日から、平穏な日々が続く。
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