小さな橋を渡ると金木犀の匂いがした。「あっ秋の匂いだ」、走っていた自転車の速度を緩めた。
この頃、急ぐ必要も無いのに、何だかバタバタと動き回っている。出し忘れていた夏物のクリーニング、枯れた植木鉢の花苗、物干しのピンチを入れる籠、思いついてはあちこちに買い物に行く。ホームセンターには3回も行ってしまった。台風の余波でお天気がぐずついていた後は、何かせかされる。
頼んでいた紅玉が届いた。この時期にしか出ないりんごで、赤くて小ぶり、噛むと果肉はかたく、酸っぱくて甘い。私が小さい頃によく食べたりんごだ。
そのままでも食べるが、ジャムもよく作る。皮をむかずに作ると綺麗なジャムになると言うが、口あたりがごそごそするので私は皮をむいて小さく刻む。
裏の奥さんが、ビニール袋に入った青唐辛子を持ってきてくれた。広げてみるとかなりの量がある。「お味噌に刻んだらおいしいわよ」と言う、でも多すぎる。
いい事を思いついた。以前、貰った行者ニンニクを漬けて重宝したことがあった。
洗ってへたを採った唐辛子を、ドレッシングの瓶にぎゅうぎゅう詰めにして醤油を入れた。何日かおいてから、野菜炒めなどの調味料につかうとコクが出る。
そして、直ぐに食べられるよう、小さ目の唐辛子を微塵に刻んでお味噌と混ぜ,味見をしたらすごく辛い。冷蔵庫から根しょうがとみょうがを出し、小さく刻んで混ぜる、まだ辛い。合いそうなのは茄子とオクラ、これも微塵切りにして混ぜる。これでいいかも知れない。
朝の後片付けを済ませた台所で、ジャムを煮ながら、トントン野菜を刻んでいると、お母さんをしているなと可笑しくなった。
あんなに暑かった夏が嘘のように、真っ青な秋空はひんやりしている。
課題【秋・自由課題】 2010.10.22提出
先生の講評
生活への愛と安心がある。いいじゃん!
赤い線の部分がべたつく。