エッセイ 年末の旅行(1) 課題【恋・愛・憎】 2018年㋁23日
夫は昨年、「もう一度、青森の蔦温泉に行きたい」、「奈良の大仏様を観たい」と二つのことを言い始めた。
蔦温泉は若い頃に行き、温泉では一番だと言っていた。
仕事の都合で休みが取れる時が大抵夏休みだった。
私は夏に温泉は乗り気になれなかったが、あれほど言うのだからと、今年は早い内に宿の予約をし、切符の手配をした。
青森は遠いと思い込んでいたが、新幹線で行けば思ったほどのことはなかった。
二泊し、中日は奥入瀬、十和田湖巡りをしたが、シーズンを外れた観光地は人影もまばらだった。
温泉は悪くなかった。いや今、帰ってからの感想はとても良かったと心に残る。
木の浴槽は広く、天井が二階以上あるほど高い。澄んださらっとした水質は期待以上だった。
私は温泉に行っても宿の待遇などが良ければいいと考えているほうだが、行けるものなら、もう一度このお湯に浸かりたいと思う。
今年の目玉の旅行をしたから、「奈良」は気持ちから外れた。
が、夫はあきらめていなかった。
秋の行楽シーズンのニュースが流れると「奈良の大仏様」を言い出す。
その度に「一人で行って来たら」と言ってはみたが、一人では行かないと言う。
昔は二人で旅に出る、なんて本当に夢だったのに、いつの間にかワクワク感がなくなった。
何なのだろう。いつか来る別れに未練を残さないようにとの神様の仕業だろうか。
よく思春期の娘が父親を嫌うのは、潜在的に近親相姦を避けるためだという。
又組み合わせに首をかしげるようなカップルが惹かれあうのは、よい子孫を残すためと聞いたことがある。
12月に入って、私は内視鏡検査をを受け体調をくずした。
おろそかな家事をし、とげのある言葉も使った。
夫は何も言わない。
自己嫌悪になった。
今朝も寒い中、会社に行った。
感謝が足りない。
このまま年を越すのは嫌だ。
今年中に奈良に行かなければと思った。
先生の講評・・・下線部分で、夫婦二人の時をかみしめている。
甘く、苦い。これがキャリアの味。
つつじのつぶやき・・・ 昨年の大きな旅行でした。
もう一年が・・・早いですね。