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2015-02-20 16:00:01 | Running
箱根駅伝の走者は、体調管理が難しいか

プレジデントオンライン2015年2月20日(金)10:21


なぜ、箱根駅伝の走者は、体調管理が難しいか
(プレジデントオンライン)

PRESIDENT 2015年3月2日号 掲載

■真面目な人ほど風邪をひいてしまう

暦の上では春なのに、寒い日が続く。気温が低くて空気が乾燥する2月は風邪の流行る季節でもある。

そこでタイムリーなクイズをひとつ。次の3つうち、もっとも風邪(感染症)に弱い生活習慣はどれか。

a 1日中座っている人
b よく歩く人
c よく走る人

米アパラチアン州立大学のデイビッド・ニーマン教授の研究によれば、答えは、c→a→bの順。健康の王道・ランニングが風邪に弱いとは!

市民ランナー最大のイベントでもある東京マラソンが差し迫っている。皮肉なことに、マラソンシーズンは風邪やインフルエンザの流行とだいたい同じ。マラソンブームの盛り上がりに水を差すようだが、ランナーでなくとも知っていたほうがいい要諦がある。

休日、たまに走るくらいならば気にすることはない(クイズで言えばbレベル)が、特に大会に出るような勤勉なランナーが風邪に弱い。

理由はいくつかある。(1)どうしても口呼吸となり、冷たい空気をダイレクトに肺に吸い込む。(2)過度の練習と大会出場の心理的ストレスで免疫機能が低下する。(3)低体脂肪率で感染症への耐性が弱い。(4)日光に長時間晒されるため、皮膚や粘膜の防御機能が低下する。

4つに共通しているのは「活性酸素」の害だ。日光に長時間当たったり酸素を大量に摂り込んだりすると、体内に活性酸素が発生する。活性酸素はナチュラルキラー細胞(ウイルスなどの外敵から身体を守る細胞)の働きを弱め、免疫機能を低下させ、結果、感染症リスクが高くなってしまう。

健康にいいはずのランニングなのに、走れば走るほど活性酸素の害に晒されるのだ。なんたるジレンマか。

感染症は全身病なので、風邪をひいてしまっては大会にも出られない。頑張りすぎた結果の、本末転倒である。

なぜ、箱根駅伝の走者は、体調管理が難しいか

プレジデントオンライン2015年2月20日(金)10:21


なぜ、箱根駅伝の走者は、体調管理が難しいか
(プレジデントオンライン)

大会でいい成績を残したいランナーはどうすればいいのか。

今や正月の国民的行事となった箱根駅伝。視聴率が30%近いというからものすごい人気である。大学生ランナーは1区間約20キロメートルを走り、襷を繋ぐ。彼らは月に1000キロメートル近い走り込みを経て本番に臨むという。箱根駅伝の時期も風邪の流行る季節である。1人の不調がチーム成績に影を落とすから、各チームともに風邪対策には細心で最新の注意を払う。

駅伝の常連チーム、國学院大陸上競技部を率いる前田康弘監督はこう話す。

「栄養面、衛生面で普段から感染症予防には気をつけていますが、風が冷たくなるころから対策を強化します。まず合宿所の各部屋にウイルス抑制の空気清浄剤を備えます。そのうえで『出ない、入れない』。選手はなるべく人ごみに出かけない。そして合宿所には人を入れない。家族やOBの励ましも、極力辞退してもらっています。面会謝絶です」

駅伝アスリートは重篤な入院患者のような扱いを受ける。それでも風邪をひく選手が出てくるという。

「年末、箱根を走るメンバーリストが決まります。風邪をひくのはリストに漏れた補欠の学生が80%程度を占めます。緊張感が切れてしまうのでしょうか。そういう現象はどの大学の監督も認識していて、選ばれたメンバー以外を合宿所から実家に帰すチームもあるそうです。ウチはそこまでやりませんけど」

駅伝でもマラソンでも、月に1000キロメートル走るなど自分を追い込み、厳しく練習しないと試合では勝てない。しかし頑張れば頑張るほど、感染症リスクも高まる。このジレンマを賢く乗り越えた末に、勝利の栄光がある。

「マラソンなどの長距離走は、大人の競技である」とはよく聞かれる言葉だ。いいタイムを出すためのレース戦略、目標から逆算した練習戦略には大人の成熟度が必要である。

そして、プラス自己管理だ。絶対に風邪をひかない、という決意と、それにもとづく環境整備が必要なのだ。

ビジネスシーンが遠大なマラソンレースだとすれば、感染症対策(=自己管理)は重要だ。そこに配慮できるかどうかで勝負が決まる。

(須藤靖貴=文 時事通信フォト=写真)

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