■ 有吉佐和子の作品で、まず浮かぶのは『恍惚の人』と『複合汚染』。それから『華岡青洲の妻』。280
毎日新聞(2025.02.22付)の書評面に載っていた文庫ベストセラーの3位は有吉佐和子の『青い壺』だった。先日、この作品を読んだ。有吉佐和子の作品を読むのは『非色』以来2年半ぶり。
ある陶芸家の焼いた青磁の壺が映し出す様々な人間模様を描く13編の連作短編集。売られ、盗まれ、スペインまで行った青い壺が再び日本に戻り、最後に作者の陶芸家が再び目にすることに・・・。
連作の最後は、巡り巡ってスペインに渡った壺を買い求め、日本に持ち帰った美術評論家の元を訪ねた陶芸家がその壺は十年余り前に自分が焼いたものであることに気がつく。しかし評論家は**「うむ。名品だよ。南宋浙江省の竜泉窯だね。十二世紀でも初頭の作品だろう。(後略)**(326頁)というストリー。
松本清張が短編推理小説で書いていそうな展開だ。この陶芸家は骨董屋に請われるままに焼いた陶器に古色をつけ、江戸初期の骨董づくりに手を染めているというのだから、清張。
それにしても有吉佐和子は、人間模様を実にリアルに描くことができる作家だったと思う。この連作短編集然り。50年近く前に発表された作品だが、今また読まれているというのも、この辺りにその理由がありそうだ。
再読するなら『華岡青洲の妻』かな。