■ 『神様』は川上弘美のデビュー作で、第一回パスカル短篇文学新人賞を受賞した。くまにさそわれて(小説では「くま」も「さそわれて」もひらがな表記)川原へ散歩に出かけるというごく短い物語だが、この作品に福島第1原発のトラブルの後、手を加えたのが『神様2011』で、雑誌「群像」に掲載されている。今日(19日)えんぱーくで読んだ。
**「いい散歩でした」
くまは305号室の前で、袋から鍵を取り出しながら言った。**
**「いい散歩でした」
くまは305号室の前で、袋からガイガーカウンターを取り出しながら言った。**
『神様』ではくまが袋から取り出すのは鍵だが、『神様2011』ではガイガーカウンターになっていた。帰宅すると外部被曝線量と内部被曝線量を計測し、累積外部被曝線量と累積内部被曝線量を計算するのだ。 そう、 花たちが日々の外気温の積算値を「計算し」、それがある値になると咲き出すのと同様に、被曝線量は日々の値ではなく、その「累積値」が問題になることを川上弘美はきちんと書いている。
あとがきには**静かな怒りがあれ以来去りません**とあった。 いち早く福島第1原発のトラブルを小説で取り上げた川上弘美はやはり作家としてスゴイ。
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