■ 「男はつらいよ」は日本の原風景探訪映画と捉えることもできる。このシリーズでは寅さんの旅先の地に立つ火の見櫓が写っていることがある。寅さんシリーズの中でベスト5に入る第10作「寅次郎夢枕」。そのラスト、寅さんと舎弟の登(秋野太作)が木造の橋を渡って行く。その橋の向こうの木々の間に火の見櫓が立っていることに気が付いた。映画を観ていても櫓センサーはONになっているから。
このシーンは山梨県の北杜市須玉町を流れる塩川に架かる清水橋で撮影されたことがネット情報で分かっている。グーグルマップとストリートビューでこの火の見櫓を確認できたので出かけたいと思っていた。
ラストシーン 右上に火の見櫓が写っている。
山梨県の山荘に向かう途中でこの火の見櫓を見ようと決めていた。この火の見櫓の近くにある北杜市立塩川病院をカーナビの目的地に設定して、現地に行き着くことができた。到着時刻は11時24分。自宅を出発したのが7時20分だったから、4時間経っていた。ちなみに走行距離は89kmだった。
「寅次郎夢枕」が公開されたのが1972年(昭和47年)だから、50年も前のことになる。当時木造だった橋は架け替えられているし、周辺の様子も変わっている。カメラを構えた位置が違うので後方に写っている山も違うけれど、河岸段丘地形までは変わり様も無い。
1423 北杜市須玉町藤田 4柱44型ブレース囲い(高さかせぎ)202.12.11
「寅次郎夢枕」の公開は1972年(昭和47年)12月、撮影も同年だろう。その年には既にこの火の見櫓が立っていたと思われる。
火の見櫓の後ろに小さな神社(刈穂稲荷神社)があり、境内に入ると脚部の様子を見ることができた。火の見櫓はRC造の消防倉庫の上に立っている。高さかせぎ屋上型。倉庫は正面側だけが地上に出ていて、残りは地中。なんとも厳しい立地だ。見張り台の高さは約10m。総高は13mくらいだろう。
次は各部の観察。
屋根のてっぺんの避雷針に付けられた風向計は矢羽根付きの一般的な形。方形屋根の四隅に隅角(すみづの)。見張り台の手すりにやや縦長の蔓様の逆さハート。街灯に用いられるような形の照明器具が設置されている。夜間、消防団員は火の見櫓に登るのに、灯りは欲しい。
手すりの内側に消防信号板を取り付けてある。これが望ましい位置で、信号を見ながら半鐘を叩くことができる。「まだ火の見櫓の半鐘、叩いていますか?」と近所のおばあさんに訊く。「今は、叩いていないねぇ」。
地上から踊り場まで外付け梯子が掛けられている。梯子の上端を囲むように手すりが設置されている。柱が傾斜しているので、その分手すりも傾き、水平ではない。
基礎から柱を垂直に立ち上げ、横架材で繋ぎ、その位置から上方に逓減させている。脚部はへの字形に設置されたブレースで4方が囲まれている。このタイプ、名付けて「ブレース囲い」。
消防倉庫のファサード。